研究課題/領域番号 |
26289332
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堤 成一郎 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (70344702)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 疲労 / 寿命 / 弾塑性 / 残留応力 / き裂発生 / き裂伝播 / 溶接 |
研究実績の概要 |
各種構造物の変形や疲労,破壊を対象とした数値シミュレーション技術の向上は著しく,実験による計測が困難な局所的な情報も取得可能になりつつあるが,得られる結果は採用する材料モデルの特性に大きく依存する.疲労解析を目的とした既存モデルの多くは,材料の降伏応力を超えるような低サイクル疲労現象で観測される応力ひずみ曲線のヒステリシス・ループやラチェット現象などの塑性変形を再現可能である.しかしながら材料に生じる応力が降伏応力以下のいわゆる高サイクル疲労問題では,既往の材料モデルは実験的に観測されるラチェット挙動や繰返し軟化特性を表現し得ず,繰返し負荷により蓄積される塑性変形やダメージを過小評価し,危険側の寿命予測を与えることになる.つまり,任意形状の構造物に対する任意荷重条件下の疲労寿命予測を高精度に実現するためには,溶接熱影響部を含む材料の非弾性特性,さらに疲労き裂発生やその後の進展までを高精度・高効率に予測可能なモデルとそれを用いた解析技術の確立が不可欠である.なお,これまで著者らは,低サイクル疲労に限定されること無く,巨視的弾性・高サイクル疲労条件下にも適用可能な繰返し弾塑性モデルを導入したFEM解析技術の開発を行っている. そこで本研究では,開発中の材料モデルを組込んだFEM解析技術を用いて,実験による計測が困難な溶接止端部における残留応力の緩和挙動などに対する弾塑性挙動を明らかにし,さらにき裂発生寿命を予測することを目的とする.ここでは特に,非荷重伝達型十字溶接継手を模擬した解析モデルを対象に,溶接止端部の形状および溶接残留応力の有無を変化させたモデルを設定し,引張および圧縮予荷重の有無が,その後の繰返し負荷に伴う残留応力緩和挙動に与える影響などに関して考察を行い,開発システムの有用性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非荷重伝達型十字溶接継手を対象として,開発中の材料モデルを組込んだFEM解析技術を実施した.また,実験による計測が困難な溶接止端部における残留応力の緩和挙動を明らかにし,さらにき裂発生寿命を予測できることを明らかにした.ここでは特に,溶接止端部の形状および溶接残留応力の有無を変化させたモデルを設定し,引張および圧縮予荷重の有無が,その後の繰返し負荷に伴う残留応力緩和挙動に与える影響などに関しても考察を行い,開発システムの有用性を確認することができ,さらに実験的検討の準備も進んでおり,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,開発中の材料モデルを組込んだFEM解析技術を用いて,実験による計測が困難な溶接止端部における残留応力の緩和挙動を明らかにし,さらにき裂発生寿命を予測することを目的としている.今後は,様々な継手を模擬した解析モデルを対象に,溶接止端部の形状および溶接残留応力の有無を変化させたモデルを設定し,変動応力の有無が,その後の繰返し負荷に伴う残留応力緩和挙動およびき裂発生寿命に与える影響などに関して考察を行うとともに,溶接継手を対象とした各種力学試験の実施,および計算結果との比較を通じて開発システムをさらに発展させる予定である.
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