これまでに、地面効果翼に作用する定常空力および非定常空力を推定する計算法を確立している。この方法は、ポテンシャル理論と2次元CFD計算を組み合わせたユニークな方法であり、2次元翼断面の空力特性を2次元CFDにより計算しておけば、それから三次元翼の摩擦抗力を簡易にかつ高精度に推定することができる。失速角を越えた領域でも有用な方法である。
開発した計算法の推定精度を確認するために水槽試験を実施している。耐水性の圧力ゲージを埋め込んだ地面板を水中にセットし、船舶の非定常波形解析の手法を応用することで、地面効果翼が巡航する際の地面上の圧力分布を計測する。実験法自体、新規の方法であり、取得したデータも世界初のデータとなる。得られたデータと開発した計算法の結果を比較することで、計算法が圧力場を高精度に推定できていることを確認している。
更に、地面効果内で稼動する矩形翼および前翼式地面効果機の主翼に関する風洞模型試験を行い、翼表面圧力分布の計測を行っている。高性能圧力ゲージ32個を埋め込んだ風洞試験模型を3Dプリンターを利用して製作し、地面効果内の翼表面に作用する圧力分布を翼端を含む複数断面で計測している。得られた計測値を用いて、これまでに構築した理論推定法の推定精度を詳細に検証している。最後に、前翼式地面効果翼機模型を製作し、全機の空力特性の風洞試験を実施するとともに、理論計算との比較を行い、機体の静的な縦安定性に関する考察を行っている。風洞試験においては、推進器稼動状態でのパワー付き風洞試験も行い、推進器が全機空力や縦安定性に及ぼす影響について考察している。
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