本研究題目は,勤務先を変更したために成果を公表するまでに至らず,研究期間を1年延長した。しかし,査読付き公表論文の仕上がりまでには至らず,研究期間を終了した。ただし,本研究題目の中での主要な実験は終了しており,論文の仕上げと必要な数値解析のみを残しているのみである。本申請題目の研究費を用いた研究は終了するが,今後は,投稿料を別途工面して査読付き論文を仕上げて投稿する予定である。 本研究の目的は,鉄鋼材料の疲労亀裂伝播性能を向上させるために,鉄鋼材料の変形能を高めた場合,及び亀裂伝播中に硬い結晶組織に出会うことにより,亀裂を3次元的に折れ曲がり伝播させる場合ついて伝播寿命の変化を調査し,確認することであった。 その結果,鉄鋼材料の変形能を高めることについては,780MPaクラスの静的強度を有する鉄鋼材料では伸び性能を2.5倍とした材料の亀裂伝播寿命が1.5倍長くなることを確認した。しかし,より汎用性の高いと考えられる570MPaクラスの材料で確認したところ,残存した圧縮残留応力の影響が大きく,伝播中の疲労亀裂がほとんど停止してしまった。また,硬い結晶組織に伝播中の疲労亀裂が出会うことによって疲労亀裂を屈曲伝播させて伝播寿命を延ばすことについては,同じ荷重範囲を付加した場合には伝播寿命は3次元的に折れ曲がる鋼材のほうが18%延びただけであったが,降伏応力に対する負荷応力の比を同じにした場合には,3次元的に折れ曲がり伝播する鋼材のほうが伝播寿命が2.3倍に延びるという結果が得られた。
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