研究課題/領域番号 |
26289341
|
研究機関 | 独立行政法人海上技術安全研究所 |
研究代表者 |
田口 晴邦 独立行政法人海上技術安全研究所, 流体性能評価系耐航性能研究グループ, グループ長 (70344455)
|
研究分担者 |
黒田 貴子 独立行政法人海上技術安全研究所, 流体性能評価系耐航性能研究グループ, 主任研究員 (00415811)
塚田 吉昭 独立行政法人海上技術安全研究所, 流体性能評価系運動性能研究グループ, 主任研究員 (90425752)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 船体運動時系列計算 / メモリー影響関数 / たたみ込み積分 / 定傾斜 / Wave Group |
研究実績の概要 |
Wave Group中における船舶の最終挙動に基づいて船舶の運航リスク評価するためには、Wave Groupなどの過渡的な波浪に対する非線形な船体運動をシミュレーションすることが必要である。 平成26年度は、Wave Groupも含めた任意波中における船舶の挙動を推定するために必要な、船体運動時系列計算コードを開発した。その際、過渡的な船体運動を合理的に推定するために、たたみ込み積分型船体運動モデルを採用するとともに、定傾斜が付いた状態で水面下の船体形状が左右非対称となったことで縦運動と横運動が連成するような場合も考慮できるように定式化を行った。なお、メモリー影響関数に関しては、縦運動と横運動の連成項も含めて、周波数領域の特異点分布法による流体力係数を用いて評価することにした。 本計算コードに関しては、まき網漁船を対象に正面規則波中で定常傾斜が付いた状態について船体運動の試計算を行い、過渡状態及び定常状態の応答について定数係数型時系列計算結果と比較し、その妥当性について検討を加えた。 また、定傾斜が付いた状態で2次元模型3隻及び漁船模型1隻を用いた水槽試験を行って規則横波中の強制力を計測し、周波数領域の特異点分布法による波浪強制力の推定結果と比較した。その結果、定傾斜角は同じでも傾斜する方向(波上側、波下側)により波浪強制力の大きさが変化するなどの定性的傾向も含め、周波数領域の特異点分布法により波浪強制力の計測結果を説明できることが確認された。そのため、周波数領域の特異点分布法による強制力係数を用いた船体運動時系列計算コードでは、定傾斜が付いた状態で水面下の船体形状が左右非対称となった場合についても適切な波浪強制力で船体運動計算が行うことができると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、波浪中船体運動に起因する船舶の運航リスクを、その原因となる一連の波浪(波群:Wave Group)の発生確率と当該波浪中における船舶の最終挙動に基づいて評価する手法を開発することである。 平成26年度は、その評価ツールの一部として任意のWave Group中における船舶の最終挙動の推定を行うために、Wave Groupなどの過渡的な波浪による非線形な船体運動をシミュレーションする時系列計算コードを開発した。そのため、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.Wave Groupの特性を指定した造波試験 Wave Groupの特性を指定した不規則波のシミュレーション方法に基づき、実海域再現水槽の全周分割吸収型造波機を用いた具体的な造波信号を作成し、造波試験を行って、造波方法の妥当性を検証する。 2.Wave Group中の船体運動の時系列計算法の検証 1.により発生させた特性の異なるWave Group中で模型試験を行って船体運動を計測し、任意のWave Group中での船体運動時系列計算コードによる計算結果と比較することで、計算法の妥当性を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度当初は、波浪強制力計測試験用小型模型船の製作及び実海域再現水槽で使用する波浪強制力計測装置の改修の費用を予定していた。しかしながら、試験を行う水槽を当初予定から変更し、計測を行う波向を横波に限定したことから、既存の模型船及び波浪強制力計測装置を使用できることになり、小型模型船製作費及び波浪強制力計測装置改修費が不要となったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、翌年分として請求した研究費と合わせて、平成26年度に開発した船体運動時系列計算コードの検証のために行う、Wave Group中の船体運動計測試験に用いる自由航走模型船の製作費及び高精度出会波高計の購入に使用する。
|