研究課題/領域番号 |
26289345
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
鷺坂 将伸 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (60374815)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 原油増進回収 / 二酸化炭素 / 粘度 / 会合体 / 自己組織化 / 棒状 |
研究実績の概要 |
本研究は、効率的な原油増進回収技術の開発に向け、平成26年度~29年度の4年間で、CO2の10倍の粘度増大を引き起こす長い棒状逆ミセルの形成を,[1]界面活性剤分子の構造最適化と,[2]補助剤(多価金属イオン,助界面活性剤や高分子)の探索,[3] [1][2]の最適条件の最終調整により達成させることを目的とした。 昨年度では、上記研究[1]を重点的に行った。まず、高圧下での粘度測定をするために、キャピラリーと差圧計を備えた高圧装置を作成した。棒状逆ミセルを形成しやすいハイブリッド界面活性剤を種々合成し、作製した装置内で超臨界CO2に溶解させ、その溶液がキャピラリーを通る際の差圧を測定することで粘度を求めた。この結果、ハイブリッド界面活性剤FC6-HC6 (C6F13-Ph-COCH(SO3Na)-C6H13, Ph: phenylene group)では、50mMのときアスペクト比が5.7程度のCO2系棒状逆ミセルを形成した。これは、過去の論文のデータと照らし合わせると1.5倍程度のCO2の粘度増大を引き起こすものと考えられる。また、[1]について、原油増進回収では、地中に存在する金属塩が水に溶解し、高塩濃度水溶液を生じる。これが、逆ミセルを析出させる、または増粘効果を失わせるような形態変化を起させることが考えられる。そこで、昨年度から、水や塩の濃度に依存しない棒状会合体の開発を加えた。そこで、親水基を持たないFC6-HC6類似化合物(C6F13-Ph-NHCO-C6H13)の合成を行ったところ、50mMで1.2倍程度のCO2の粘度増大を引き起こすことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標の10倍にはまだまだ遠い粘度増大の成果ではあるが、棒状逆ミセル(または棒状会合体)の形成に成功し、そして界面活性剤および非両親媒性分子の分子設計の指針も得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、アスペクト比の大きい棒状会合体の形成に向け、[1]ハイブリッド化合物の分子構造の最適化を4月から来年3月末まで1年間を通して行う。構造の最適化では、平成26年度に開発された棒状会合体を形成するハイブリッド化合物の分子構造をベースとして、会合体の棒形状をより伸長させる構造(アミド基、ウレア基、芳香環など)を分子内に取り入れた化合物を合成し、その会合体の形態やCO2増粘効果を評価する。[2]補助剤の探索については、平成27年10月から開始し、その時までに最高の粘度増大を引き起こしたハイブリッド化合物をホストとして、会合体の棒状化を助長させる化合物を市販の化合物の中から探索する。候補としては、CO2に溶解性のある化合物、例えば棒状会合体のバックボーンとなりうるポリマー(低分子量PMMA)や、水素結合性基を有する芳香族化合物などである。上記の棒状化に作用する補助剤やホストの分子構造を探るうえで、官能基間の相互作用の有無やその強弱を探ることは非常に重要である。そのため、超臨界CO2流体用赤外分光光度計を製作し,それぞれの基に由来する赤外吸収の波数シフトから相互作用を検討し,有効な補助剤およびホストハイブリッド化合物の分子構造の情報を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究では、申請書の段階から超臨界CO2流体用赤外分光光度計の装置作製を念頭に置いていた。しかし、交付額は申請額よりも大きく削られており、装置の購入が難しかった。そのため、平成26年度の旅費および人件費を削り、次年度へ繰り越すことで、平成27年度の研究費使用計画(分光光度計の購入)を可能にした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の残額は、平成27年度の赤外分光光度計の購入費用(200万円)の一部として使われる。なお、購入する赤外分光光度計は、高圧流体観察装置に組み込まれ、棒状会合体形成の駆動力となる分子間相互作用の評価に使われる。
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