研究実績の概要 |
効率的な原油増進回収技術の開発に向け、平成28年度は、油田中の水や塩の濃度に依存しない棒状会合体の開発を目指し、親水基を持たない種々のハイブリッド化合物(C6F13-Ph-X-CnH2n+1, X=ウレア基、カルボニル基、またはアミド基、n = 2, 4, 6, 8)を合成し、CO2増粘効果の評価を行った。合成した化合物のうち、最も水素結合能力が大きい尿素化合物p-F6UH6(X=ウレア基およびn=6)は、全化合物の単独系で最大の1.45倍の粘度増大を発現した。溶解性の向上と更なる粘度増大の発現に向けて、p-型分子に対して置換位置の異なるm-型分子を加えた混合系の検討を行ったところ、p-F6UH6とm-F6AH6(X=アミドおよびn=6)の等モル混合系で、それぞれの化合物単独系よりも増粘効果が強く発揮され、全化合物単独系および化合物混合系のうち最大となる1.7倍の増粘効果が確認された。また、アミド基から尿素基へと連結基の水素結合能力を大きくすることで会合体の形状をより棒状に特徴づけられることがSANS測定の解析から証明された。特に、m-F6AH6, p-F6UH6等モル混合系では会合体のアスペクト比がp-F6UH6単独系に比べ3.5から4.2に増大し、最も長い円筒状の会合体が形成されていた。補助剤としてPPOなどの高分子の添加による棒状会合体の伸長を試みたが、棒状の伸長は生じなかった。しかし、高分子自身の粘度増加効果が加わり、p-F6UH6/PPO混合系で2倍程度の粘度増大が確認された。また、CO2溶解性界面活性剤の対イオンにコバルトイオンを採用することで、CO2の2.2倍の粘度増大に成功した。
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