研究実績の概要 |
H28年度に棒状会合体の形成が確認されたフッ化炭素―炭化水素ハイブリッド化合物に対し、棒状会合体の芯となるCO2溶解性ポリマーを複合し、CO2の粘度増大に有望な棒状会合体が全体に張り巡らされた3Dネットワーク構造体の開発を目指した。CO2溶解性ポリマーとして、イソプロパノールをマレイン酸とエステル化し、それを酢酸ビニルとともに重合した多分岐ポリマーとを合成した。英国Rutherford Appleton研究所の小角中性子散乱(SANS)測定装置LOQを利用して、1~2 wt%のCO2溶解性ポリマーと、35mMまたは50mMのハイブリッド化合物を超臨界CO2に溶解させ、SANS測定を行ったところ、円筒状粒子の理論曲線が最も良好にSANSデータに一致し、推定された棒状会合体の半径Rと長さLは、45℃と350barの条件でポリマー2wt%のみではR= 1.56 nm, L=4.60 nmであり、さらにハイブリッド化合物p-F6AH6を50mM加えた場合には、R= 1.22 nm, L=13.0 nmとなり、棒状会合体のアスペクト比(L/2R)が1.47から5.32に増大し、ポリマーとハイブリッド化合物が共存することで棒状会合体が明確に伸張し、3Dネット―ワーク構造の前駆体が形成していることを示唆した。これによる粘度の増大は、20%程度であると推定された。さらに、ハイブリッド化合物にスルホン酸ナトリウム親水基を付けた界面活性剤FC6-HC5が同条件の超臨界CO2中で、35mMの比較的低濃度環境でR= 1.22 nm, L=87.9 nmの棒状会合体を形成することがSANS測定から確認された。この棒状会合体は、CO2の粘度を3倍増大させることが推定され、原油増進回収に有用であることがわかった。
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