研究課題/領域番号 |
26289346
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
坂口 清敏 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (50261590)
|
研究分担者 |
渡邉 則昭 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (60466539)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 地殻応力 / 地震予知 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,定点における浅所地殻応力の継続的測定によって,1 東南海沖地震の予兆変動を定量すること,および2 2011年の東北地方太平洋沖地震後の地殻応力場の経年変化を定量することであり,この成果を中期地震予知につなげることになる。1に関して本年度は,定点測定が可能な測定地点の選定に重点を置いた調査を行った。具体的には,高知県内に分布する四万十層群内に掘削された隧道(7地点)の中から適所の選定に関する調査および,和歌山県内に位置する揚水式発電所空洞の適否についての調査を行った。その結果,和歌山県内の地下発電所空洞が有望であるとの結論を得た。2に関しては,釜石鉱山で3年前に実施した絶対応力の測定ボアホールを利用した連続ひずみ測定(1回/30分)を実施し,そのひずみ測定結果から地殻応力の連続変化(地震後2年から4年目まで)を定量化した。その結果,地震後3年目までの結果を見る限り,最小主応力については,円錐孔底ひずみ法による3年の絶対応力測定結果と比較して過小評価していたものの,最大主応力,中間主応力は一致しており,信頼性のある結果が得られたと判断した。また,各主応力の方向は鉛直上方から見て時計回りに回転していることが明らかとなった。この結果は東北地方が震源方向に移動しているという電子基準点(釜石,950170)のGPS観測による報告と整合している。以上の結果から,本研究の目的達成のためには,定点における地殻応力の連続測定は有効であることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東南海沖地震を対象とした定点応力測定については,当初,高知県の鳥形山鉱山の鉱石運搬用ベルトコンベア坑道(日鉄鉱業株式会社)を予定していたが,先方の操業上の理由で不可能となり,その後,石灰石鉱山も視野に入れて調査を行ったが,いずれも不適との結論をえた。これにより,進捗状況に遅れが生じた。その結果,本年度内おける東南海沖地震を対象とした地殻応力測定は実施できていない。しかしながら,このことはある程度想定したことでもあり,また,概要に述べたように,高知県内の隧道および和歌山県内の地下発電所空洞の候補地を得ることができたので,おおむね達成できていると判断している。一方,東北地方太平洋沖地震後の地殻応力の変動を調査することに関しては,計画通りの研究が進行しており,十分な成果を得ることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
国内の2か所で原位置応力測定を実施する。測定場所としては,岩手県釜石鉱山と東南海沖地震エリア(和歌山県南部の地下発電所空洞を予定)とする。釜石鉱山における応力変化測定は,前年に引き続き測定を継続する。ただし,応力変化測定に使用するストレインセルは,長期間の連続測定を対象としたセンサではないので,平成26年度に設置したセンサが機能しなくなっている可能性もあるので,この場合は新しいものと交換して測定を継続する。原位置応力測定の実施毎に,応力測定で得られた岩石コアを用いて室内力学試験(弾性係数評価,異方性評価が目的)を実施する。 得られた成果の詳細な分析,検討を行う。地殻応力場の経年変化を詳細に分析する。この際,電子基準点の解析結果による上下方向,水平方向の変動も検討材料として利用する。また,釜石鉱山の測定結果に対しては,江刺地球潮汐観測施設で観測されている地殻ひずみ等の連続データや,地震研究の方から得られているデータ等も検討の対象資料とする。東南海地震エリアでの測定結果に対しても同様の手法がとれるよう研究協力者(横山氏,林氏)と連携する。得られた成果は都度,国内学会誌,国際誌および国内外における学会,シンポジウム等で発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額の全ては,東南海沖地震を対象とした原位置応力測定に関わる費用(掘削費,測定場所借り上げ日等)である。しかし,本年度は候補地の選定にとどまっただめ,当該費用の支出がなかった。これが次年度使用額が生じた理由である。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は確実に原位置応力測定を実施するので,当該使用額は全て消化する予定である。
|