研究課題/領域番号 |
26289349
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研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
研究代表者 |
阿部 淳 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 研究員 (70513604)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地殻工学 / 中性子回折 / AE信号測定 / 三軸圧縮試験 / 岩石供試体 |
研究実績の概要 |
地下環境空間を工学的に利用するためには、地下岩盤を形成する岩石材料の力学特性を理解しておく必要がある。これまで、種々の岩石材料を供試体に用いて、一軸圧縮試験を行いながらAE(Acoustic Emission)信号と中性回折パターンの同時測定を行い、岩石材料にひずみが蓄積するメカニズムを検討してきた。しかしながら、地下環境下における岩石材料の力学特性を評価するためには、三軸圧縮下でのひずみ測定へ展開する必要がある。そこで、本研究では、岩石供試体に三軸圧縮応力を印加しながら、AE信号測定と中性子回折実験が可能なシステムを開発している。 岩石材料を一軸圧縮試験しながら中性子回折実験およびAE信号測定を行った結果をまとめ、解析し、岩石材料にひずみが蓄積するメカニズムあるいは中性子回折装置の光学系の測定条件がひずみ量におよぼす影響を検討した。そこでは、岩石材料を用いた中性子実験において、実験条件(入射ビームサイズ・強度・発散角など)によって発生するpseudo-strainについて評価した。 加えて、円筒形の岩石材料供試体に三軸圧縮を印加しながら、中性子回折実験およびAE信号測定を可能な三軸圧縮システムを設計・製作した。本圧縮システムの仕様を検討するにあたり、岩盤工学を専門にする研究者へのヒアリングを行い、地殻工学への応用を考え、封圧は50MPaまで印加できるようにした。 本圧縮装置は平成29年度末に完成、納品され、現在は本装置の立ち上げ、動作試験を行っているところである。平成30年6月にこの圧縮装置を茨城県東海村に建設された大強度陽子加速器施設"J-PARC"(Japan Proton Accelerator Research Complex)の"工学材料回折装置『匠』"に持ち込み、岩石供試体に三軸圧縮を印加しながらAE信号測定、中性子回折実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で用いる三軸圧縮システムは平成28年度に仕様を検討し、中性子を用いた予備実験を行い、その後、装置の設計・製作を行う予定であったが、中性子を用いた予備実験がJ-PARCの中性子標的容器の不測の故障による運転停止および中性子ビーム強度の低下によって行えなくなった。それにより、圧縮装置の仕様の検討、設計および製作が当初の計画よりも遅れたため、研究の進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に岩石材料に三軸圧縮を印加しながら中性子回折実験とAE信号測定が可能な三軸圧縮システムを設計・製作したが、これの動作確認が十分ではないため、まずはコミッショニングを行い、それと同時に装置の取り扱いを習熟する必要がある。平成30年6月にはJ-PARC『匠』での中性子実験が可能なため、それまでにコミッショニング作業は完了させる。 平成30年6月に『匠』で岩石材料を三軸圧縮しながらAE信号と中性子回折パターンの同時測定を行い、ひずみの蓄積メカニズムを解析する。岩石材料には、地熱エネルギー貯留層、高レベル放射性廃棄物の地層処分場のターゲットとして期待される花崗岩、あるいは石油や天然ガスの貯留層であり、二酸化炭素の地下貯留としてむ期待される砂岩を用いる予定である。それにより、一軸圧縮下と三軸圧縮下でのひずみ蓄積メカニズムの違いなどを解析、検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
J-PARCの中性子標的容器の不測の故障によって、本研究課題で使用する三軸圧縮システムの設計・製作が当初の計画よりも遅れたため、本実験装置を用いた実験が平成29年度中にできなかったため、実験試料、実験装置部品などを購入するために、費用を翌年度に使用することにした。
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