放射性廃棄物の地層処分のような地下環境空間を工学的に利用するには、あるいは、化石燃料などの地下資源を回収するためには、地下岩盤を形成する岩石材料の力学的特性を理解する必要がある。これまでの本研究代表者の研究において、岩石材料が変形するメカニズムを詳細に解析するために、種々の岩石供試体に一軸圧縮荷重を印加しながらAE(Acoustic Emission)信号と中性子回折パターンの同時測定が行えるシステムを開発し、ひずみ測定を行ってきた。しかしながら、地下環境下でのより複雑な応力状態における岩石材料の力学的特性を評価するには、三軸圧縮下でのひずみ測定へ展開する必要がある。そこで、岩石供試体に三軸圧縮応力を印加しながら、中性子回折法を用いたひずみ測定が可能なシステムを開発し、三軸圧縮応力下でのひずみ蓄積メカニズムを解明することを目指している。 円柱形の岩石材料を供試体に用い、封圧三軸圧縮試験をしながら中性子回折実験が可能な三軸圧縮システムを設計・製作した。本装置は最大封圧50MPaを岩石供試体に印加しながら軸方向に荷重をかけることができる。平成29年度末から平成30年度前半にかけて、装置の立ち上げ、動作試験を行った。平成30年度の6月と2月に本装置を茨城県東海村に建設された大強度陽子加速器施設"J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)"の工学材料回折装置「匠」に持込み、封圧三軸圧縮試験を行いながら中性子回折法をもちいたひずみ計測を行った。 「匠」での中性子回折実験の結果、封圧および軸方向の荷重によって、岩石材料に含まれる石英鉱物のピーク位置がシフトする結果が得られた。本結果は現在、解析中であり、このひずみ測定結果から、ひずみ蓄積メカニズムを今後検討する。
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