研究課題/領域番号 |
26289351
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野上 修平 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00431528)
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研究分担者 |
江原 真司 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30325485)
福田 誠 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70757666)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核融合炉 / ダイバータ / タングステン / 引張強さ / 延性 / 疲労寿命 / 再結晶温度 |
研究実績の概要 |
タングステン(W)ダイバータの主たる損傷事象は疲労であるため、き裂発生寿命の延伸、き裂成長の抑制、再結晶化の抑制などが必要である。これまで我々は、ナノ組織制御Wの優れた表面損傷耐性と高い再結晶化温度、ボイド分散強化Wの高い再結晶化温度とき裂成長抑制の可能性を明らかにした。本研究では、熱疲労劣化挙動の学理究明によりナノ組織制御材とボイド分散強化材を疲労の観点から最適化し、ボイド分散強化材の表面層にナノ組織制御材の優れた特性を付与した傾斜機能ダイバータ用Wを創生することを目的とする。これに対し、平成27年度は以下の成果を得た。 (1)平成26年度に開発したボイド分散強化Wに対する高温疲労特性評価を、同じく平成26年度に開発した高温疲労試験装置を用いて実施した。その結果、ボイド分散強化とそれに伴う結晶粒微細化により、ボイド分散強化Wは純Wに比べて疲労寿命が長くなることが明らかになり、開発目標が概ね達成されたことを確認した。 (2)合金添加元素としてレニウムを3%添加し、加工率を調整した圧延およびスエージングを組み合わせた方法により、非常に微細な結晶粒組織を有するナノ組織制御Wを製作した。微細組織と再結晶化温度を評価した結果、結晶粒は非常に微細な等軸粒になっており、再結晶化温度と粒成長の抑制が認められた。 (3)傾斜機能長寿命ダイバータの設計指針を得るため、ITER純Wモノブロックダイバータの損傷形成メカニズムと、ボイド分散強化Wやナノ組織制御Wをモノブロックとして適用した場合の構造強度の変化について、有限要素解析により検討した。その結果、本研究で注目する熱疲労だけでなく、再結晶脆化によるき裂発生の可能性が示され、純Wに比べて再結晶温度が高いボイド分散強化Wやナノ組織制御Wの有効性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、メカニカルアロイング(MA)と熱間等方圧プレス(HIP)を組み合わせた方法によるナノ組織制御Wの製作を予定していたが、借用予定の装置が所有機関の事情により使用できない状態になってしまったため、計画を断念せざるを得なくなった。しかし、もう一つの製作方法として検討していた、合金元素添加と圧延およびスエージングを組み合わせた方法を用いることにより、高性能な素材開発に成功した。他の実施項目は順調に進展したため、計画全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、主として以下を実施し、本研究を推進する。 (1)平成27年度に引続き、開発したナノ組織制御Wについて、引張特性などの基本特性評価を実施し、キャラクタリゼーションを完了する。引張特性の評価結果を基に、共通勾配法を適用することにより疲労寿命を予測し、既存の純Wや平成26年度に開発したボイド分散強化Wと比較検討する。 (2)平成27年度に開発したナノ組織制御Wに対する高温疲労特性評価を、同じく平成26年度に開発した高温疲労試験装置を用いて実施し、既存の純Wや平成26年度に開発したボイド分散強化Wと比較検討する。これにより、タングステン系材料の疲労寿命評価における共通勾配法の適用性についても検討する。 (3)既存の純W、平成26年度に開発したボイド分散強化W、平成27年度に開発したナノ組織制御Wに対し、サイクロトロン加速器を用いてヘリウム注入実験を実施する。注入条件等は、平成26年度の予備試験結果に基づくこととする。 (4)純Wモノブロックダイバータの損傷形成メカニズムの評価結果を第22回核融合デバイスにおけるプラズマ表面相互作用に関する国際会議(PSI-22)において、ボイド分散強化Wをモノブロックダイバータに適用した場合の構造強度の評価結果を第22回核融合エネルギー技術に関するトピカルミーティング(TOFE-22)において、ボイド分散強化Wやナノ組織制御Wの疲労寿命の評価結果を第29回核融合技術シンポジウム(SOFT-29)において発表する予定である。
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