研究課題/領域番号 |
26289352
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坂本 瑞樹 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30235189)
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研究分担者 |
渡辺 英雄 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (90212323)
時谷 政行 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30455208)
芦川 直子 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (00353441)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プラズマ・核融合 / 水素吸蔵 / 照射損傷 / タングステン |
研究実績の概要 |
中性子照射を模擬した高エネルギー重イオン照射によって生成されるタングステン中の欠陥の水素捕獲特性を調べるために、再結晶タングステンに対して2.4MeVの銅イオンを0.4dpa照射後に重水素プラズマを照射してからSIMS計測を行い、銅イオンと重水素イオンの深さ方向分布を測定した。銅原子の深さ方向分布はSRIMコードにより計算された分布と同様であること、重水素原子の深さ方向分布は銅イオンの存在する領域にほぼ限られていることが明らかとなった。一方、銅イオンを照射していない再結晶タングステン試料に対して、同様の重水素プラズマ照射を行った後のSIMS計測では重水素原子は低濃度ではあるが銅イオン照射した試料の場合よりも奥深くまで存在していることが示された。これらの結果は、照射損傷による欠陥が水素を捕獲するとともに水素の拡散を阻害している可能性を示唆している。 照射損傷タングステンの水素吸蔵量低減法開発のためにタングステン基板上にクロム層とタングステン層を蒸着した試料(W-Cr-W試料)を製作し、その試料に対して重水素プラズマ照射を行い水素吸蔵特性を評価した。試料に対してプラズマの照射時間(すなわちフルエンス)を変えてTDS測定を行い重水素吸蔵量のフルエンス特性を測定したところ、重水素吸蔵量が2E24 D/m2程度で飽和傾向を示すことが分かった。また、試料への重水素プラズマ照射後のGD-OES測定によりタングステン、クロム、重水素の深さ方向分布を測定し、クロム蒸着層が水素の拡散障壁として機能していることが示唆された。さらに、重水素プラズマ照射後のSEMによる表面観測から表面にブリスタリングが発生していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高エネルギー銅イオン照射したタングステン試料における銅イオンと重水素原子の深さ方向分布と銅イオン照射していないタングステン試料の重水素原子の深さ方向分布を行い、それらの特性を明らかにすることができた。また、タングステン基板上にクロム層とタングステン層を蒸着した試料(W-Cr-W試料)の重水素吸蔵特性を明らかとし、クロム層が重水素の拡散障壁となっていることを示唆することができた。
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今後の研究の推進方策 |
W-Cr-W試料の重水素の深さ方向分布のデータを蓄積し重水素吸蔵特性をさらに明らかにする。W-Cr-W試料のタングステン最表面に発生したブリスタリングの抑制機構についての実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度後半の実験で大変よい結果が得られ、この成果を平成30年6月に開催される国際会議で発表し、その後に学術雑誌にも発表することで、補助事業の成果を世界に発信するため。また、追加実験を行いさらに高度な成果を得ることで、補助事業の目的をより精緻に達成するため。 (使用計画) 平成30年度初めに開催される国際会議の旅費と参加費及び研究を遂行するための消耗品を購入するために使用する。
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