コアシェル型多孔質シリカ担体としてPhenomenex社製のKinetex 5 μm HILICを,対照試料の全多孔質担体として同社のLuna 5 μm HILICを用い,大環状化合物としてBenzo-15-crown-5(B15C5)を選定し,B15C5をキシレンに溶解し,担体の細孔に含浸保持させて,リチウム同位体分離用吸着剤を調製した.調製した吸着剤を,内径4 mm,有効充填長250 mmのカラムに充填して,0.5 mol/LのCH3COOLi水溶液を0.5 mL/minの流量で流し,前端分析法によりHETP値を評価した.液相担持したB15C5が溶出してしまい,カラムの性能は繰り返し使用とともに低下した.最初の操作時におけるコアシェル型および全多孔質型の吸着剤充填カラムのHETP値は,どちらも約4 cmとなり,既存の吸着剤に対して優位な値とはならず,また,担体構造の差も認められなかった.改善策として,シラノール基を介して担体とB15C5を化学的に結合し,耐久性の高い吸着剤とすることが考えられる. 開発した計算コードを用いて,供給抜き出しのあるプロセスのシミュレーションを行い,供給抜き出しの割合が分離性能に及ぼす影響を評価した.分離性能の指標として分離パワーδUを計算した.内径8 mmのカラムに直径が350 μmのクリプタンド樹脂を充填し,濃度が0.5 mol/Lの酢酸リチウム水溶液を0.5 mL/minで流し,吸着帯長さを1 m,抜き出しを展開2 m毎に行う条件において,抜き出し割合が12%の場合に分離パワーが最大値0.14 mmol/hとなった.90%濃縮された6Liを年間100 t生産するためには,単純スケールアップすると,直径50 cmのカラムが35本必要であることがわかった.
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