研究課題
平成27年度は非照射財の有限要素法解析と応力分布計算を異材接合材に拡張し、衝撃試験で得られる荷重-変位曲線の再現を試みた。衝撃試験では、異材接合界面で亀裂が発生する際の応力状態を変化させる目的で、試験片サイズを変化させた。1.5 mm×1.5 mm×20 mmのサイズの試験片を用いた衝撃試験に関する計算では、試験片に亀裂が発生する直前まで、有限要素法で荷重-変位曲線を再現できる見通しが得られた。ただし、実験で得られた荷重-変位曲線を再現するためには、計算に入力する母材の変形特性データのうち、降伏強度を上昇させなければならないことが明らかとなった。この原因は、母材の変形特性データを取得した引張試験における歪速度よりも、衝撃試験における歪速度が大きいことが原因と考えられる。降伏強度の上昇が妥当かどうかを確認するためには、衝撃試験における母材の変形特性データを取得する必要がある。中性子照射材については、300℃、0.1 dpaの条件で中性子照射した異材接合材試料の評価を継続した。フェライト鋼側の熱影響部に直径50ミクロン程度の照射脆化の著しい領域が確認されたため、その生成機構の検討を行った。その結果、これは溶接後の焼き戻し熱処理の際に母相に残留した固溶炭素が照射下で析出することが原因と推定された。焼き戻し温度を変化させた熱処理実験を行い、焼き戻し温度を高くすることで固溶炭素の残留を解消できる見通しを得た。中性子照射材について、衝撃試験片後の試料形状の測定を行い、平成28年度に予定している有限要素法計算による計算との比較するためのデータを取得した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は非照射の異材接合材の不均一変形を計算で再現できる見通しが得られた。ただし、計算の妥当性を確認するためには、母材の高歪速度における変形特性を実測する必要が生じたので、平成28年度の課題とする。照射材についても、変形量を実測し、計算と比較するための準備を整えた。以上より、追加的な課題は生じたが全体として予定どおり研究が進行している。
上記のとおり、実験で得られた荷重-変位曲線を再現するためには、計算に入力する母材の変形特性データのうち、降伏強度を上昇させなければならないことが明らかとなった。これが妥当かどうか確認するためには、フェライト鋼とステンレス鋼のそれぞれの母材から、ノッチの無い衝撃試験片を作製し、異材接合材と同じ条件で衝撃試験をする必要がある。この追加実験を平成28年度に行い、計算手法の正しさを確認する。また、非照射における実験と計算の比較検討を中性子照射材に拡張するためには、計算に必要な照射後の母材の変形特性データをとる必要がある。平成28年度は異材接合と同じ条件で中性子照射した母材の引張試験を行い、変形特性データを取得する。
3月執行については、精算払いであったため、支払日が4月となった。機関のルール上、4月支払分については年度内の支出に計上されないため、繰越となってしまったが、計画的に執行している。
全額執行済みである。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)
Fusion Engineering and Design
巻: 98-99 ページ: 1968-1972