研究課題
高速中性子用シンチレータの選定においては、中性子とガンマ線の弁別が可能なシンチレータである、スチルベンシンチレータ、液体シンチレータ(BC501A)並びにプラスチックシンチレータ(EJ299-33)の特性評価を行い、中性子カメラに使用するシンチレータの選定を行った。パルスの発光量並びに中性子とガンマ線の弁別性能を比較し、どちらの性能も優れているスチルベンシンチレータを使用することに決定した。信号処理ユニットの開発においては、中性子に起因するパルスとガンマ線起因のパルスの立ち上がり又は減衰時間の違いを利用して中性子信号を弁別する部分において、シンチレータが本来有している高速応答性を引き出すために、デジタル信号処理に基づく信号処理ユニットの開発を行った。中性子とガンマ線で異なる電圧パルスの生信号の立ち上がり時間を検知できるソフトウェアプログラムを作成した。光電子増倍管から出力されるパルスを全て記録した後、開発したソフトウェアを用いることで中性子とガンマ線を生信号の段階で弁別することが可能となった。加えて、超高速自動パルス弁別機能を有するデジタル信号処理技術の開発においては、パルス波形弁別の自動化システムの開発に向けField-Programmable Gate Array(FPGA)のプログラムの製作に着手した。現在のところ、10の5乗カウント毎秒のパルス処理が可能なシステムの製作については完了しており、目標である10の6乗カウント毎秒の処理が可能なプログラムに変更を行っている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、1.デジタル信号処理に基づく信号処理ユニット、2.シンチレータの選定、並びに3.超高速自動パルス弁別機能を有するデジタル信号処理技術の開発に着手することを計画していた。1.については予定通り、中性子とガンマ線を生信号の段階で弁別するソフトウェアの開発を終了した。2.においては、高速中性子用シンチレータの比較を行い、発光量並びに中性子とガンマ線の弁別性能の比較から最適なスチルベンシンチレータを選定した。3.においては開発に着手した。よって、順調に進展しているといえる。
メモリサイズに依存しない形のリアルタイム信号処理を目指し、自動パルス弁別処理を可能とするハードウェア、具体的には、Field-Programmable Gate Array(FPGA) と呼ばれる製造後に設計者がプログラムにより機能を設定出来る集積回路に基づく自動処理システムを実現するための開発作業を進める。開発したシステムを、実際に核融合中性子照射により MHz 帯でシンチレーション検出器並びにデジタル信号処理ユニットを動作させ、意図したシステムとして機能することを確認する実験を行う。この実験により、問題点が明らかになった場合は、その克服に向けた改善作業を逐次行う。平行して、中性子コリメータの最適化作業も進める。核融合中性子カメラは、多チャンネル高速中性子検出器とその中性子がプラズマを見込む視野を制限するポリエチレン、或いは重量コンクリートで作られたコリメータで構成される。検出器に高速中性子により弾き出された反跳陽子のエネルギー付与を検出するシンチレータを用いるため、高速中性子に感度が高く、すなわち検出器にはある程度の指向性は自然に備わっているとはいえ、中性子分布測定にはコリメータの導入は必要不可欠である。本研究では検出器システムの最適化、標準化作業の他、標準中性子コリメータの提案も行う計画である。
シンチレーション検出器に用いる遠隔高電圧電源の購入が次年度になったため。
翌年度分の研究費と合算し、遠隔高電圧電源の購入を行う。
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Review of Scientific Instruments
巻: 85 ページ: "11E114"
10.1063/1.4891049
巻: 85 ページ: "11E110"
10.1063/1.4890399