研究課題/領域番号 |
26289360
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
谷川 博康 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 六ヶ所核融合研究所, グループリーダー (50354668)
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研究分担者 |
渡邊 誠 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先進高温材料ユニット, 主幹研究員 (00391219)
黒田 聖治 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先進高温材料ユニット, ユニット長 (50354220)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 界面組織 / 熱負荷試験体 |
研究実績の概要 |
平成26年度に製作に成功した摩擦撹拌処理(FSP)した真空プラズマスプレー(VPS)法により低放射化フェライト鋼F82H上に作製した1mm厚のタングステン皮膜(W皮膜)について、W-F82H界面の微細組織観察を実施し、界面は機械的に攪拌されているものの有害な微小空孔が形成されていないことを確認した。また、同界面に対して30dpaまでイオン照射実験を実施し、異常な組織成長等は発現せず、攪拌効果により照射組織発達が抑制されていることが示された。 一方、FSP強化されたVPS-W皮膜は基盤部との熱膨張率に違いがあることから、繰り返し熱負荷に耐えうるかが開発の焦点となるため、有限要素解析により製作したFSP強化VPS-W皮膜の利用を前提とした熱負荷試験体の設計を行い、界面温度が500℃になる熱負荷条件と設計を導出し、その計算にもとづき電子ビーム熱負荷装置の利用を前提とした熱負荷試験体の製作を実施しした。 ウォームスプレー(WS)法によるW皮膜形成最適条件の探求においては、原料粉末を融点以下の温度範囲にて加熱軟化させつつ超音速に加速し、固相状態のまま衝突密着させるWS法について、タングステン粒子による実験を実施した。その結果、現有の装置により達成できる粒子速度、及びWS法の予加熱温度範囲では粒子が衝突時に十分に昇温せずに堆積できないことが明らかになった。比較として、高温溶射法を試行したところ、溶射自体は成功することが示された。ただし酸化が進むことが明らかになったことから、雰囲気を制御する、あるいはレーザー等による皮膜の追加加熱が可能性として検討された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FSP強化機構の解明とW皮膜FSP強化最適条件の探求においては、当初の予定通りFSP強化したW皮膜と基盤部の界面について、有害な組織が観察されないことを確認し、FSP強化の有意性を確認することが出来た。W皮膜・基材及び界面に対してイオン照射実験を実施し、組織安定性の確証を得た。またWS法によるW皮膜形成においは、粒子予加熱温度及び粒子速度が現状では皮膜を形成するには十分ではないことが示されたが、解決策についても検討を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に製作した、FSP強化VPS-W皮膜の熱負荷試験体について、電子ビーム熱負荷試験装置による熱負荷試験を実施し、FPS強化の有効性を検証するとともに、引き続きイオン照射試験等を実施し、より詳細な微細組織分析及び物理・強度評価によるFSP強化機構の検討を進める。また平成27年度の研究から、タングステン粒子が接合するために予備的加熱または雰囲気制御が必要であることが明らかとなった。この方針に対応したプロセス改造を多面的に推し進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たな条件でのW皮膜製作及び熱負荷試験体の製作を予定していたが、FPS強化VPS-W皮膜の組織評価に時間を要したこと、及び現状でのWS法によるW皮膜に課題が見つかったことから、新たな条件でのW皮膜製作を実施しなかったことから使用差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に得た知見をもとに、あらたなVPS-W皮膜の製作をすすめるとともに、改良WS法等による新皮膜形成法によって製作した皮膜の試験体製作を実施する。
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