研究課題/領域番号 |
26289362
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
黒堀 利夫 金沢大学, 人間科学系, 教授 (90153428)
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研究分担者 |
武村 哲浩 金沢大学, 保健学系, 准教授 (70313674)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 銀活性リン酸塩ガラス / 放射線イメージング / LiF薄膜 / 蛍光ガラス線量計 / ラジオフォトルミネセンス(RPL) / 格子欠陥 |
研究実績の概要 |
医療現場における放射線診断・治療への応用を目指して,小線量(数μGy)から大線量(~100 Gy)に亘る広いダイナミックレンジと共に,ミクロンオーダーの高い空間分解能(位置精度)を有する蓄積型検出器の開発を目的とした。この要求に応えるため,ラジオフォトルミネッセンス(RPL)現象に基づく銀活性リン酸塩ガラスとフォトルミネッセンス(PL)現象に基づくBK7ガラス基板上に成膜したフッ化リチウム(LiF)を併用して上記特性を満足するエリア放射線検出器を開発した。さらに,研究者独自の提案によるディスク形状に加工することで,検出器のサイズに関係なく単独の読取機だけで,高品質な線量分布画像を迅速に収集する放射線検出器を構築した。 平成27年度は前年度に引き続き,線量計としてのダイナミックレンジの拡大と微弱線量に対する読取機の高性能化を実施した。 (1)前者の課題に対しては,銀活性リン酸塩ガラスで数 mGyから10 Gyの線量領域を,一方,ガラス基板上にLiF薄膜を蒸着した検出器で10 Gyから1 kGyの高線量領域をカバーでき,その結果を査読付欧文として投稿した。特に,高品質なLiF薄膜を成膜するために,蒸着時のガラス基板温度などのパラメーターの最適化,および蒸着方式(電子ビーム加熱法,抵抗加熱法)の選択による成膜の評価・検討を行った。特に,評価として通常の光学特性評価に加え,XRD(X-ray diffraction)やXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)による物理分析の評価も行った。 (2)後者の課題に関しては,高速(数十ギガサンプル/秒),高感度(数 mV)なデジタルオシロスコープの導入で2D,3Dイメージを高精細,高感度で測定可能な読取システムを構築した。このシステムの特徴は,異なる2つの検出器の励起レーザー波長だけを切り替えるだけで,そのRPL,PL蛍光を収集する光学系の変更が一切必要とせず,今後の実用化に繋がる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)研究者が独自に提案・開発した2つの検出器の併用で8桁に亘るダイナミックレンジの達成が実証できた。 (2)特に100 mmΦのディスク型光学ガラス基板上に1μm程度の高品質なLiF薄膜を作製する知見を得た。 (3)RPL蛍光イメージ読取システムに高速・高感度デジタルオシロスコープを導入し,ソフトならびにハードウェアを新たに導入することで,高精細な2D,3D線量イメージの迅速な収集が可能となった。 (4)現時点でこれらの結果を4編の査読付欧文に発表しており,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)放射線として異なるエネルギーを有するX線(8,17,47,165 keV)のみならず,137Cs, 60Coガンマ線,重粒子線(H, He, C, Fe, Siイオン)など線種の違いによる検出器の感度,応答特性を調べる。 (2)医療分野への応用に対して,高線量(1-1000 Gy)およびミクロの空間分解能の両条件が必要となるマイクロビーム放射線治療に,本研究で開発した銀活性リン酸塩ガラスならびにBK7ガラス基板上に成膜したフッ化リチウム(LiF)検出器が適用可能かどうか検討する。 (3)上記2つの検出器を合体した,すなわち銀活性リン酸塩ガラス上にLiF膜を蒸着した検出器では,どのような特性を示すのかを追究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の残額68,159円は物品費に予想以上に支出し,旅費と謝金を穴埋めした形になったため。研究分担者は計画どおり消化し残額は無い。
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次年度使用額の使用計画 |
代表者の残額68,159円はH28年度物品費として使用する。
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