研究実績の概要 |
医療現場における放射線診断・治療を対象に,その領域で必要となる小線量(数μGy)から大線量(~100 Gy)に亘る広いダイナミックレンジを有し,さらにミクロン(μm)オーダーの高い空間分解能(位置精度)を有する2種類の蓄積型検出器ならびにその読取機の開発を目標とした。そのために検出器として,ラジオフォトルミネッセンス(RPL)現象に基づく銀活性リン酸塩ガラスおよびフォトルミネッセンス(PL)現象に基づくガラス基板上に成膜したフッ化リチウム(LiF)を併用したエリア放射線検出器を開発した。一方,読取機として,放射線照射したガラス検出器に紫外線(UV)励起により発する微弱蛍光を迅速かつ精度良く光電子増倍管(PMT)で検出後,高速A/D変換を介してデジタル化しLANでパソコンに取り込み,画像の再構築を行うシステムを開発した。 特に,最終年度は医療現場でのこれらのシステムの導入を念頭に置いて,蛍光ガラス検出器と時間分解蛍光スペクトル装置を併用した本研究者の提案に基づくリアルタイム線量計としての実証を行った。具体的には,放射線源として医療分野で注目されているプロトン,炭素イオンなどの重粒子線(照射は放射線医学総合研究所,千葉市)のHIMACを利用した。さらに,各重粒子線の異なるエネルギー付与(LET)値の増加に伴いRPL効率が低下する原因を追究した。用いたイオン種とエネルギーは以下の通りである:1-Hイオン, 160 MeV, 4-Heイオン,150 MeV, 12-Cイオン, 290 MeV,14-Siイオン, 490 MeV, 56-Feイオン, 500 MeV, 132-Xeイオン, 290 MeVである。特にプロトンイオン線をガラス検出器に照射すると共に,UV光励起で発せられる時々刻々の蛍光強度の変化を測定することで線量率,線量のリアルタイムモニターとしての性能評価を行った。
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