研究課題/領域番号 |
26289369
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
石岡 典子 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主席 (30354963)
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研究分担者 |
山田 圭一 群馬大学, 理工学研究院, 助教 (70323334)
山口 藍子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 寄付講座等教員 (80609032)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射性同位体 / ペプチド薬剤 / 医薬品開発 / スクリーニング / 癌 |
研究実績の概要 |
本研究では、RI標識ペチドライブラリーから標的分子との結合性を有するペプチドを選抜し、薬理効果および腫瘍集積性を有するペプチド医薬品候補を見出す手法を開発する。開発に先立ち、多くのがん細胞に発現する標的分子(Her2)に結合する6残基のD体アミノ酸から成るペプチドを見出すことを目的とした。一次選抜として、I-131標識用のチロシンをN末端に有する2400万種類のペプチドで構成されるライブラリー(y-X1-X2-X3-X4-X5-X6, X:グリシン、チロシン、システインを除く17種類の天然アミノ酸のD体)を設計し、4残基をランダム化した3シリーズ867種のランダムペプチドライブラリーの作製に取り組み、現在、8~9割完成した。加えて、約8万種類のペプチドを含有するライブラリーに対するI-131の標識において、反応に関わる重要な因子(反応温度、時間等)を最適化し、標識効率の良いI-131標識ランダムペプチドライブラリーの安定的な作製法を見出した。Her2に対する結合評価法の開発では、担体にHer2タンパクを結合させた人工標的及びELISAを応用した評価法を検討した結果、人工標的では未反応のI-131の非特異的な結合の回避、ELISA応用法では結合放射能量の増加が課題であることがわかった。Br-77を用いた二次選抜に向けた検討では、スズ-ハロゲン交換反応を利用するための標識前駆体を合成する際、スズ置換基が酸処理に不安定であることから前駆体をN末端以外に導入できないことが分かった。そこで、配列中の任意の位置に標識可能な新規前駆体ペプチドの合成について検討した結果,ケイ素置換アミノ酸誘導体から対応するBr体へと良好な収率で変換でき,ペプチド合成中の酸・塩基処理でもケイ素置換基が脱離しないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究における重要な基盤技術となるRI標識ランダムペプチドライブラリーの作製法および標的分子との結合評価法において、前者についてはほぼ確立したものの、後者については前者の結果と連動して進める必要があったため、現在も検討中である。したがって、今年度目的とした一次選抜の本格的な開始に若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
Her2に対する結合評価法の課題について、その方策を次に示す。人工標的法における未反応I-131の非特異的な結合を回避するために、I-131標識反応後のペプチド溶液中に過量の安定ヨウ素を添加し、未反応I-131の担体に対する非特異的結合を競合的に阻害することが可能かどうかを検討する。ELISAを応用した評価法の課題である結合放射能量の増加については、I-131の使用量の増加及びHER2タンパクに対する試料の結合培養環境の最適化により結合量を上げる等の工夫を加え、計測値の増加を検討する。ELISAを応用した評価法は人工標的法に比べて簡便であることから、上記の工夫を加えた上で実際のペプチドを用いた結合実験を行い、選抜へ応用するための条件を見出す。以上の検討により、結合評価法を決定した後は、作製した867種のD体アミノ酸ランダムペプチドライブラリーにI-131を標識し、順次、選抜を進めて行く。一次選抜と同時に、二次選抜に向けてFmoc固相合成が可能なケイ素置換アミノ酸誘導体の合成を行い、実際にペプチド合成と標識化を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
スクリーニング要員として人件費を見積もっていたが、スクリーニングの開始が遅れたため、次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
スクリーニング実験のための試薬類等物品費の他、スクリーニング要員として人件費に使用する予定である。
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