研究課題/領域番号 |
26289372
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉川 邦夫 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (70134848)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エネルギー変換・生成 / バイオマス / 再生可能エネルギー / バイオ燃料 |
研究実績の概要 |
ラボ規模の水熱処理実験装置を用いて、微細藻類からのバイオオイルの抽出実験を行った。最初に、水熱処理の反応温度と反応時間が、バイオオイル、固体残渣、水溶性残渣ならびにガス状生成物の生成量に及ぼす影響を検討した。反応温度が230℃、反応時間が60分の時に、3.5%という最大のバイオオイル収率が得られ、同時に、エネルギー回収率も最大値の37.3%が得られた。 バイオオイルを分析した結果、遊離脂肪酸の含有量が高いことから、石鹸化反応を防ぐために、酸触媒を用いたエステル交換反応によって、バイオオイル中のトリグリセライドの脂肪酸メチルエステル(バイオディーゼル)への転換が適切であることがわかった。さらに、バイオオイル中には、C16~C18の、高品質なバイオディーゼルの製造に適した多不飽和脂肪酸が含有されていることも見出した。 固体残渣の肥料としての利用を目的として、栄養素含有量を固体肥料の基準値と比較した結果、カリウムとイオウを除くほとんどの栄養素が十分な量含有されていることを見出した。小松菜を用いた発芽試験によって、固体残渣には植物毒性がないことを明らかにし、25日間の室温下での小松菜の生育試験を行った。苗丈と葉幅ならびに乾燥収穫量を測定した結果、小松菜の生育には窒素分が最も重要であり、化学肥料に比べて、固体残渣のほうが、より大きな生育促進効果を有することを明らかにした。 水溶性残渣の微細藻類培養液としての利用可能性を調べるために、水で50倍に希釈して、2週間、12時間おきに明暗を繰り返す微細藻類培養試験を行い、蒸留水及び標準培養液との培養性能の比較を行った。その結果、蒸留水に比べると蛋白質、炭水化物、脂質共に生成量が上回り、水溶性残渣の培養液としての効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、中性脂肪を多量に含有する微細藻類に対して、水熱処理を施すことによって、油分の抽出を容易にし、同時に、処理残渣の高付加価値化を行うことを目的としている。本年度の研究によって、微細藻類に水熱処理を施すことによって、バイオディーゼルの製造が可能な油分が効果的に抽出でき、固体残渣は有機肥料として、また、水溶性残渣は微細藻類の培養液としての利用が可能であることが示され、ほぼ本研究の目的は達成されたと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、微細藻類の培養を行い、得られるペースト状の微細藻類に対して水熱処理を行う。微細藻類中の脂肪酸の大部分が、固体生成物中に残ることから、これにメタノールと酸触媒を加えて、脂肪酸のエステル化反応とエステル交換反応を同時に進行させた時のバイオディーゼル生成量が最大となる処理条件を明らかにする。具体的には、最初にGC-MSを用いて、微細藻類中の全脂肪酸と遊離脂肪酸の量を測定する。そして、水熱処理を行い、生成物をフィルターで濾過して、固体生成物を得る。この固体生成物に対して、メタノールと酸触媒を加えて、ガラス管中でエステル化反応とエステル交換反応を同時に進行させ、GC-MSを用いて、反応後のバイオディーゼルの生成量を測定する。 次に、比較的低い温度での微細藻類の水熱液化の実現をめざし、ナノ触媒を添加して、乾燥させた微細藻類の水熱処理の温度を変化させながら、生成されるバイオオイルの収率ならびに組成にどのような影響を与えるのかを検討する。また、他の触媒との性能の比較も行う。具体的には、ナノ触媒として、Nano-Ni/SiO2を使用し、比較用の触媒として、合成ゼオライトとNa2CO3を使用する。オートクレーブ内に、所定量の乾燥させた微細藻類と水、触媒を加え、反応温度を変化させて水熱処理を行う。水熱処理生成物にジクロロメタンを添加して、バイオオイルを溶解させ、フィルターで固液分離を行った後に、回収された液体からジクロロメタンを蒸発させて、バイオオイルの生成量を測定する。また、GC-MSを用いて、バイオオイルの組成分析も行う。そして、反応温度ならびに触媒の種類がバイオオイルの収率ならびに組成に及ぼす影響を調べる。さらに、添加する触媒の再生利用の方法についても検討する。
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