研究課題/領域番号 |
26289374
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
児玉 昭雄 金沢大学, 機械工学系, 教授 (30274690)
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研究分担者 |
汲田 幹夫 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (60262557)
齋藤 潔 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90287970)
山口 誠一 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (70454030)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 省エネルギー / 廃熱利用 / 環境技術 / 吸着 / デシカント |
研究実績の概要 |
本研究は,デシカント(水蒸気吸着材)ロータを要素とする吸着系エネルギーシステムの高度化と拡充を図り,低温排熱の利用促進に貢献することを最終目的とする。デシカントロータの設計・操作および機能拡大に際して,数値計算法は強力な開発ツールであるが,吸脱着速度に大きく影響する物質移動係数は,結局はフィッティングパラメータとなっている。本研究では,デシカントロータが,基材,バインダー,吸着材から成る複合体であることに留意して水蒸気移動機構を解明,物質移動係数の導出方法を明らかにし,数値計算結果の信頼性向上を図る。次に,この数値計算ツールを活用して,デシカントロータを用いた「吸着蓄熱」や「廃熱昇温」の可能性を探り,実験実証する。 吸着剤内の水蒸気移動速度の決定要因として,細孔径分布があげられる。よって,デシカント除湿の除湿挙動に対する細孔径分布の影響を調査すべく,各実験条件での除湿量,回転方向の温度,除湿量分布,ロータ内温度分布を測定,比較を行った。水蒸気吸着等温線形状は,平均細孔径が小さいSmallロータでは低相対湿度領域での吸着量が大きく,平均細孔径が大きいLargeロータでは高相対湿度領域での吸着量が多い傾向を持つ。 結果の一例として, 50℃再生条件ではLargeロータの除湿量が多い結果となった。これは,有効吸着量の差と一致するが,70℃再生条件では有効吸着量の大小に反して,Smallロータの除湿量が最も大きくなった。これは,再生空気の相対湿度低下に伴い,より小さな径の細孔が水蒸気の吸脱着に関与することを示唆する。 詳細な実験データに既存の数値計算を適用したところ,細部に不一致が観察された。これより,数値計算の信頼性向上のためには,吸脱着に関与している細孔径と吸着量の関係,さらには吸脱着速度の関係を明らかにすることが重要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平均細孔径が異なる吸着材から成るロータを用いた実験を行い,ロータ出口の温度・湿度分布,ロータ内の温度分布など,数値計算の検証に不可欠な詳細な実験データを入手できた。また,既存の数値計算ツールでは,全体性能はおおよそ再現できても,ロータ出口の温度・湿度分布がうまく表現できないこともわかった。この点で,空気・装置条件と吸脱着に関与する細孔径および吸着量の関係を速度論的に解明する必要性が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
高度数学モデルによる実験結果のフィッティングと実験結果をシミュレートできる物質移動係数の与え方を検討する。高度数学モデルでは,空気流れ方向,ロータ回転方向,吸着材深さ方向に局所物質移動係数を考慮する。このため,物質移動係数の温度依存性や吸着量依存性の与え方によって計算結果が違ってくる。空気境膜と比較的大きな細孔内では分子拡散により,ミクロ細孔内では表面拡散により,その間のメソ細孔領域ではクヌーセン拡散を主体として水蒸気移動が生じると考えられ,それぞれ温度依存性の大きさが異なる。よって,気相側1つと固相側3つの合計4つの拡散抵抗について,前年度研究成果を手がかりとしながら,拡散抵抗の組み合わせ方(並列あるいは直列)と重み付けを行う。計算→実験結果との詳細比較→水蒸気移動機構と物質移動係数の再検討→数学モデルの改造→計算を繰り返して水蒸気移動機構の解明と数値計算の信頼性向上を達成する。なお,必要に応じて水蒸気移動機構解明のための検証実験・補足実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
数値計算ツールの開発を担当する研究分担者(齋藤,山口)に,それぞれ少額の次年度使用額が生じた。その理由は,金沢大学での研究打ち合わせが,次年度に先送りになったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
金沢大学での研究打ち合わせのため,東京~金沢の旅費として使用する予定である。
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