研究課題
リチウム二次電池電極材料において、リチウムを挿入あるいは脱離後に電気回路を遮断すると、熱力学的平衡に向かって電極材料の状態が変化する。申請者はこの状態変化を経時的に解析することにより、電極材料の充放電による動的な状態から平衡論的状態に向かう構造緩和過程を明らかにできることを世界に先駆けて見いだし、「緩和解析」と名付け、種々のリチウム二次電池電極材料を解析している。γ-Fe2O3については、X線リートベルト法を用いた緩和解析により、リチウム挿入により8aサイトのFeが16cサイトに移動し、これが緩和時間の経過に従い、8aサイトに戻ることをすでに議論している。平成28年度において、磁化率、XAFS、中性子回折を用いて緩和解析を行い、詳細に解析した。γ-Fe2O3にLiを挿入後、磁化率は60時間程度かけて緩やかに変化した。Feのサイト占有率の変化により説明できる。Li挿入直後の試料と緩和後の試料のXAFS測定を行った結果、緩和により四面体サイトのFe3+が増加することが確認された。Li挿入直後のγ-Fe2O3と緩和後のγ-Fe2O3の中性子回折では、回折ピークの相対強度に違いがみられ、リチウムイオンの移動を含めて占有率を解析した。5 V級LiNi0.5Mn1.5O4のMnの一部をTiで置換すると電池性能が向上することが知られている。LiNi0.5Mn1.3Ti0.2O4について緩和解析を行ったところ、緩和の傾向は以前に明らかにしたLiNi0.5Mn1.5O4と類似していたが、より速やかに緩和することがわかり、緩和と電池性能向上の関連が明らかになった。LiMn2O4にメカノケミカル処理を施して合成すると優れたサイクル特性を示す。この物質に緩和解析を適用したところ、Li脱離後の緩和時に、Li-richおよびLi-leanの2相のモル分率や格子定数の変化が少ないことがわかった。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Electrochemistry
巻: 84 ページ: 808-811