研究課題/領域番号 |
26289379
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
徐 強 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電池技術研究部門, 上級主任研究員 (50357232)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 炭素 / キャパシター / 電池 |
研究実績の概要 |
エネルギー貯蔵・変換過程においては、イオン等の貯蔵と移動にはそれぞれ最適な空間(サイズ、構造、機能)を必要とするが、それぞれに適した空間を兼ね備えた材料の合成は困難であった。本研究では、この問題を解決するため、構造と機能を精密制御されたポーラス炭素材料の創出と高効率エネルギー貯蔵への応用を目的とする。金属塩と架橋配位子から配位高分子を合成する際に、配位高分子の特定方向の成長を抑制するために、非架橋配位子を加えたことによって、棒状の配位高分子を合成できた。この棒状の配位高分子を、不活性気体中で高温で処理すると、棒状の形状が保持されたカーボンナノロッドが形成された。さらに、カーボンナノロッドをアルカリ水溶液中で超音波処理を行った後、不活性気体中で高温での熱処理による活性化を行うと、カーボンナノロッド中で棒状に積層したグラフェンが解きほぐされて、グラフェンナノリボンが生成された。透過型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などを用いた観察の結果、棒状のカーボンナノロッドや、2~6層のグラフェンからなるグラフェンナノリボンが高い収率で形成されていることが確認された。今回開発した合成法により、高収率、簡便にカーボンナノロッドやグラフェンナノリボンを合成でき、また、通常の化学反応や熱処理以外の複雑な工程を必要とせず、大きなスケールでの生産が可能となる。また、今回開発したカーボンナノロッドとグラフェンナノリボンは、キャパシターの電極材料として優れた充放電特性を有し、高効率なエネルギー貯蔵材料としての可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究計画に沿って、配位高分子を前駆体として用いて、構造と機能を精密に制御された炭素材料を合成し、キャパシターの電極材料として優れた充放電特性を有し、高効率なエネルギー貯蔵材料としての可能性を示した。研究計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、研究計画に沿って実験・研究を行い、「配位高分子からポーラス炭素への空間転写技術」を応用することにより、炭素材料を合成し、構造と特性の精密制御を行うとともに、キャパシターや二次電池等の電極材料としての特性評価を行い、エネルギー貯蔵効率の向上を図る。研究計画を変更することなく、当初計画に沿った実験・研究を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の運営費交付金を用いて、本研究の必要経費の一部をカバーしたため、学術研究助成基金助成金が次年度に繰り越すことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越した学術研究助成基金助成金を翌年度分として請求した研究費と合わせて、本研究を一層推進する予定である。翌年度分として請求した研究費だけでは博士研究員の雇用が困難であったが、繰り越した学術研究助成基金助成金を翌年度分として請求した研究費と合わせることにより、博士研究員を雇用し、本研究を加速させる予定である。
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