本研究では、構造と機能を精密制御された多孔質炭素材料の創出と高効率エネルギー貯蔵・変換への応用を目的とする。二溶媒法を用いて、配位高分子MIL-101-NH2のナノ細孔に窒素(N)源としてdicyandiamide を、鉄(Fe)源として FeCl3を導入した。不活性雰囲気下において高温で加熱処理を行い、原子レベルでFe及びNがドープされたミクロ孔、メソ孔とマクロ孔を持つ階層型多孔質炭素材料を形成した。本階層型多孔質炭素材料では、厚さ約10 nmの炭素シートが相互連結することによって、平均孔径が50 ± 20 nmのマクロ孔が形成され、さらに、メソ孔やミクロ孔も形成されていることが分かった。高分解能電子顕微鏡による元素分布分析により、Fe原子は均一に分布されていることが分かった。XANESやEXAFS解析によって、FeNx化学種の存在が明らかになった。本炭素材料は燃料電池や金属・空気電池のカソード反応として重要な酸素還元反応(ORR)に高い触媒活性を有し、アルカリ性環境では白金(Pt)触媒よりも高い触媒性能を示した。詳細な解析の結果、ドープされた窒素原子(N)やFeNx化学種が主な活性サイトであることが明らかになった。階層型多孔質炭素材料に存在するマクロ孔やメソ孔は電解質のバファー貯蓄域の役割を果たすことによって電解質の拡散距離を短縮し、さらにメソ孔やミクロ孔の表面に原子レベルで均一に分布された高活性な触媒種に酸素(O2)は容易に接近・相互作用できるため、本材料は高い酸素還元触媒活性を有した。形成された炭素材料は高いグラファイト化度と電気伝導性を有し、ORR反応に必要な高い電子輸送性能を提供した。今回開発された貴金属を含まない高活性な酸素還元触媒は、燃料電池や金属・空気電池などのエネルギー変換・貯蔵デバイスの電極材料として高い可能性を示した。
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