研究課題/領域番号 |
26290001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
虫明 元 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80219849)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大脳皮質運動野 |
研究実績の概要 |
今年度は 両手連続動作中のサルから左右の補足運動野、前補足運動野より局所電場電位を記録して、そのベータ波の位相同期を解析した。課題では左右手の回内回外の4つの運動を2回行う課題である。まず視覚提示でどちらの手でどんな運動をするかを色で指示する(順序更新時期)。その後同じ指示―動作を繰り返した後に、指示信号無しで運動を6回程度繰り返す(順序維持期)。局所電場電位を記録すると、運動野ではベータ波が顕著にみられる。しかし、その大きさは、課題の時期により影響を受ける。 すなわち更新時期ではベータ波は弱く、維持期では顕著に増強した。この維持期のベータ波に関して 左右の半球からの信号の位相同期を調べた。位相同期は各時間窓での2つの波の瞬間位相を計算して、それがどの程度一貫しているかを見る指標である。位相同期はこれから行う両手運動のパターンの影響を受けた。すなわち 右手―右手、左手―左手―期間にどの程度見られるかを調べた。すると同じ手を2回使い、手の交代がないときに交代の有る順序動作の準備時期に比べてベータ波の同期が強く見られた。 さらに位相関係を調べてみると、最初の運動の反対側と同側ではベータ波の大きさ、位相に違いが認められた。反対側のベータ波が強くさらに位相が先行していた。このようなことから、ベータ波の左右半球の同期性は、両手の使い方に強く依存していることが判明した。 補足運動野、前補足運動野のベータ波は、記憶した動作を繰り返す維持期に強く、この時期に低下すると運動選択を誤ることがア多いことから、ベータ波の意義としては、運動準備状態の維持が示唆された。ベータ波は運動関連領野の情報表現と密接に関わり、ベータ波が高ければ何らかの情報が安定して表現されている秩序化状態、逆にベータ波低下している時には、新たな運動プログラムに更新する秩序状態の低い、遷移しやすい状態とと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補足運動野、前補足運動野のベータ波は、予測符号化などに関連した活動と考えられ、この意義が解明できたことは大変順調であると思われた。さらにデータの記録と解析が継続しており、解析が待たれる。今後の研究を進めることで、さらに複数領域の機能的な連関に発展させる予定である。また基底核疾患であるパーキンソン病との比較ができた。この病態におけるベータ波の同期が異常に高く、そのために運動の切り替えや開始ができないことと、正常時に認められるベータ波の意義は良く対応していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
さらにデータの記録と解析が継続しており、解析が待たれる。今後の研究を進めることで、さらに複数領域の機能的な連関に発展させる予定である。また基底核疾患であるパーキンソン病でのベータ波の意義と健常時の大脳皮質でのベータ波の意義とのと対応性の理解が進んだ。この病態におけるベータ波の同期が異常に高く、そのために運動の切り替えや開始ができないことと、正常時に認められるベータ波の意義は良く対応していると考えられた。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は予定通りに当初進行していたが、研究会などでの指摘もあり複数領域からの追加実験をする必要が生じた。そのために29年度内に終了せず、次年度の30年度に実験継続のための使用額が生じた。次年度使用額により、実験に必要な物品費として使用する計画である。
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次年度使用額の使用計画 |
30年度が最終年度であるため、記入しない。
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