研究課題
中枢神経系発生過程でニューロン樹状突起が多様な分岐パターンを獲得するダイナミクスと機構を明らかにすることを目標とし、パターン多様性の典型例である小脳プルキンエ細胞(空間充填型樹状突起)と海馬錐体ニューロン(サンプリング型樹状突起)をモデルとして、以下3つの課題に取り組んでいる。①空間充填型樹状突起の特徴である重複回避機構②サンプリング樹状突起の極性配向を制御するガイダンス機構③樹状突起分岐パターンの維持機構平成26年度の研究で課題②については所期の目的を達成し、論文発表した。平成27年度は小脳プルキンエ細胞を用いて①、③に取り組んだ。①について、IBARドメインタンパク質のMTSS1がプルキンエ細胞に発現し、樹状突起の空間充填型分布に関与することが明らかになった。MTSS1欠損下において樹状突起を覆う糸状仮足が異常に伸展し、接触依存的退縮が促進して突起が不安定化することを見出した。さらにMTSS1はアクチン高次構造制御因子であるForminおよびArp2/3と結合能をもち、これらの活性調節に関与することを示唆する結果を得た。これらの結果を国際学会で発表した。③について、平成26年度の研究で、小脳プルキンエ細胞樹状突起の発達において、ミトコンドリアの局所輸送とATP産生が必要であることを見出した。平成27年度はさらに、ミトコンドリア分裂制御因子のDrp1の機能阻害下ではミトコンドリアの樹状突起輸送が阻害され、ATPレベルが低下するために伸長した突起を維持できなくなることを明らかにした。この成果をまとめて国際誌に発表した。またミトコンドリア生合成の主要制御因子であるPGC1αがプルキンエ細胞分化に伴い発現上昇すること、発現抑制により樹状突起退縮が、過剰発現により過長が起こることを見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
研究目標に対し3つの課題を設定して取り組み、平成26年度までの研究で課題②は所期の目的を達成し、論文発表した。①については昨年度に見出したMtss1の機能解析を行い、分子経路同定を順調に進めることができた。課題③については平成27年度までに二報の論文を発表した。研究の進捗は順調であり、年度内の目標を上回る成果があったと言える。
最終年度にはMtss1の機能解析に焦点を絞り研究を進める。Mtss1によるアクチン動態機構を生化学および高時空間分解イメージングを含む細胞生物学的解析により明らかにする。また、樹状突起維持におけるミトコンドリア機能と生合成制御の解析をさらに発展させる。PGC1αの発現制御機構を明らかにし、樹状突起発達過程におけるトコンドリア生合成活性の動態と意義を明らかにする。これまでに得られた結果をまとめ、学術論文としてまとめる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
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