研究課題/領域番号 |
26290006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
姜 英男 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (50177755)
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研究分担者 |
豊田 博紀 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00432451)
齋藤 充 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (50347770)
佐藤 元 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10432452)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バレル野 / 島皮質 / 周期的同期化 / oscillation / 機能的カラム / GABAB受容体 |
研究実績の概要 |
認知、行動、情動などの高次脳機能は、異なる階層間での神経細胞群の発火活動の相関関係の度合い、即ち、コヒーレンスに依存して発現すると考えられているが、その回路メカニズムは不明であり、その解明は脳の動作原理を理解する上での中心課題である。本研究では、バレル野の神経細胞群の発火活動のカラム間での周期的同期化の回路機構、および不全顆粒島皮質と顆粒島皮質という隣接異領野皮質間の周期的同期化をもたらす回路機構の解明をおこない、高次脳機能発現の普遍的神経基盤の一端を明らかにする。ラットは複数のヒゲにより空間認知を行うことから、大脳皮質バレル野隣接カラム間で神経活動の周期的同期化が生じると考えられるが、その詳細は明らかではない。そこで、まず、カイニン酸投与により顆粒上層に引き起こされるoscillationの時空間パターンを調べ、また、そうしたoscillation下で、パッチクランプ法により同時記録した隣接カラムの錐体細胞や抑制性神経細胞のそれぞれで観察されるスパイク列間にどのような自己・相互相関が生じるかを明らかにすることを目指した。膜電位測光法による解析の結果、カイニン酸の灌流投与により、バレル野第2/3層の複数のカラムにわたって、δおよびθリズムから成るoscillationが引き起こされた。また、隣接カラムで同時記録された2つの第3層錐体細胞は、カイニン酸投与に応答して持続発火を示し、δおよびθリズムで同期発火していることが明らかとなった。こうした周期的同期化に対し、GABAB受容体チャネル阻害剤であるCGP55845を投与したところ、δ波が大きく抑制される一方、θ波がわずかに増加していた。これらの結果から、カイニン酸により誘発されるδリズムのoscillationは、グルタミン酸作動性神経の軸索末端に発現するGABAB受容体の働きによって生じる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カイニン酸の灌流投与により、バレル皮質において、同期化したδおよびθリズムのoscillationが引き起こされることを明らかにした。δリズムのoscillationが、CGP55845によって抑制されたことから、これらのoscillationがグルタミン酸作動性神経の軸索末端に発現するGABAB受容体の働きによって生じる可能性を明らかにすることができた。しかしながら、今年度内に周期的同期化における抑制性神経細胞の役割を明らかにすることができなかった。現時点ではVGAT-Venus遺伝子改変ラットの導入が完了し、抑制性神経細胞の役割を明らかにするための実験を開始できる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)膜電位測光法により、島皮質上の興奮伝播の時空間的パタンを定量的に解析した結果、不全顆粒島皮質味覚野から尾側の顆粒島皮質胃腸関連領域への興奮伝播の過程で、胃腸関連領域では脱分極波に先行して、feedforward inhibitionが認められたが、その抑制はCGPの潅流投与により消失した。この抑制が、どの領野のGABA細胞の働きによりもたらされているのかを明らかにするため、味覚野、或いは、胃腸関連領域の吻側や尾側のL2/3に光刺激をオシレーションのさまざまなタイミングで与え、顆粒島皮質胃腸関連領域での脱分極波の前後に見られる再分極成分がどのように修飾されるかを調べることにより、各領野での抑制性回路の働きを検証し、回路機構を明らかにする。 (2) 3週齢のVGAT-Venusラットの島皮質水平断薄切標本を作成し、三種類のパッチクランプ同時記録を行う:1) 不全顆粒島皮質味覚野のL3 PC及びGABA細胞、2) 不全顆粒島皮質味覚野および顆粒島皮質胃腸関連領域の二つのL3PC、3) 不全顆粒島皮質味覚野のGABA細胞と顆粒島皮質胃腸関連領域のL3PC。AEA投与により、両領野間に周期的同期化を持続的に引き起こし、それぞれのペアの細胞で発生するスパイク列の自己相関、相互相関解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度配分予定の基金を100万円分本年度に消耗品購入費用として前倒しし、その内約62万円分が未使用となったため、次年度使用額が生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品に関わる予算であるため、本来の予算以内で支障なく研究計画が遂行できるように、節約しつつ実験を行う。
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