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2015 年度 実績報告書

大脳皮質カラム間及び異領野間の周期的同期化機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26290006
研究機関大阪大学

研究代表者

姜 英男  大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (50177755)

研究分担者 豊田 博紀  大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00432451)
齋藤 充  鹿児島大学, 歯学部, 教授 (50347770)
佐藤 元  大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (10432452)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワードCB1 receptor / GPR119 receptor / oscillation / synchronization / Insular cortex
研究実績の概要

胃腸自律領野の神経活動が空腹時に増加し,満腹時に低下する.また,味覚刺激に応答する味覚野の神経活動は,空腹時に増強され,満腹時には抑制される.さらに,味覚野における「うま味」や「甘味」の認知により,食欲亢進が引き起こされる一方,味覚機能の低下は,食欲低下に繋がること等が知られている.このような背景を踏まえると,味覚野における「うま味」や「甘味」の認知により,胃腸自律領野の神経活動が空腹か満腹かには関わらず増加し,食欲亢進が生じるものと考えることができる.従って,隣接して存在する味覚野と胃腸自律領野の神経活動が協調する可能性が考えられるが,どのような神経活動の協調が生じるのかについては不明であった.
私たちはラットの島皮質のスライス標本を用いて,味覚野と胃腸自律領野の神経活動が,アナンダミドを含む人工脳脊髄液を灌流投与した時に協調するか否かを膜電位感受性色素を用いる方法で観察した.その結果,シータリズムの振動興奮が味覚野において誘導された後,胃腸自律領野へ伝播し,味覚野と胃腸自律領野の神経細胞間にシータリズムの神経ネットワーク活動が生じることを見出した.また,アナンダミドにより誘発されるオシレーションは,CB1受容体拮抗薬およびN-オレオイルエタノールアミンによって抑制されることを見出した.さらに,アナンダミド誘発性オシレーションは,PPARα作動薬でなく,GPR119作動薬により抑制されることを見出した.また,そのような神経ネットワーク活動が,GABAB受容体を介するフィードフォワード側方抑制によって修飾されることも明らかにした.これらの結果から,CB1受容体とGPR119の相反する作用により,味覚野と胃腸自律領野の神経細胞間に生じるシータリズムの神経ネットワーク活動が制御され,味覚野と胃腸自律領野における満腹時または空腹時の神経活動の基盤となっている可能性が示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では、当初、CB1 受容体の活性化により島皮質味覚野で誘引されるoscillation が島皮質胃腸関連領野に伝播することを見出し、それを論文としてまとめて投稿したが、査読者から、それに拮抗する受容体を明らかにすることが求められた。作動薬の働きから、拮抗する受容体は、PPARalpha ではなくGPR119 の可能性が高いことが明らかであったが、GPR119受容体の特異的拮抗薬が存在しないことから、GPR119 のknock down 或いは、GPR119 KO マウスを用いて研究を完成させる予定であった.しかし、GPR19 KO マウスの入手の手続きを行っている間に、新規のGPR119 拮抗薬が開発され論文として発表されたため、急遽、その拮抗薬を用いて、一旦、論文を完成させ、その後にGPR119 KO マウス実験は別途行うこととした。論文は平成28年9月に受理された。しかし、GPR119 KO マウスをもちいた実験については、ウイルス感染により、提供元の研究室からの供与が予定より約6か月以上遅れているので、全体の計画も、やや遅れている。

今後の研究の推進方策

今後、GPR119 KO マウスを入手し、in-vitro 及びin-vivo 行動実験を行い、研究計画を完了させる。特に、in-vivo行動実験において、島皮質味覚野と胃腸関連領野にそれぞれ留置した慢性記録電極により、両皮質神経細胞間の周期的同期化活動が観察されるかどうかを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

平成27年度に計画していた、不全顆粒島皮質(味覚野)と顆粒島皮質(胃腸関連領域)間の周期的同期化機構の解明は順調に進み、CB1受容体とGPR119受容体の相反する作用により周期的同期化が調節されていることが明らかとなり、その成果を論文としてまとめて昨年10月に投稿した。GPR119受容体の作動薬は存在するが、阻害薬が開発されていないことから、その関与についてのさらなる究明を論文査読者から求められ、新たにGPR119のknockout mice を用いた実験を次年度に行う必要が生じた。そのため研究計画を変更し、GPR119のknockout mice の作成依頼を行い、それを購入し実験を行うため、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

GPR119 KO mice を、KO マウスを受け入れる遺伝子組み換え実験申請書が承認されるまでに2~3か月を要し、その書類に基づき、UCDAVIS KOMP RepositoryからGPR119 KO miceを入手するのに3から4か月要する。また、その費用は約70万円と見込まれ、その実験に付随する必要経費を合わせて、合計110万円を要する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Seoul National University/School of Dentistry/Department of Physiology(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Seoul National University/School of Dentistry/Department of Physiology
  • [国際共同研究] Kyungpook National University/School of Dentistry/Department of anatomy(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      Kyungpook National University/School of Dentistry/Department of anatomy
  • [国際共同研究]

    • 他の国数
      2
  • [雑誌論文] A role of CB1R in inducing θ-rhythm coordination between the gustatory and gastrointestinal insula2016

    • 著者名/発表者名
      Kang Youngnam、Sato Hajime、Saito Mitsuru、Yin Dong Xu、Park Sook Kyung、Oh Seog Bae、Bae Yong Chul、Toyoda Hiroki
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 6 ページ: 1-14

    • DOI

      10.1038/srep32529

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The Possible Role of TASK Channels in Rank-Ordered Recruitment of Motoneurons in the Dorsolateral Part of the Trigeminal Motor Nucleus2016

    • 著者名/発表者名
      Keiko Okamoto, Norihito Emura, Hajime Sato, Yuki Fukatsu, Mitsuru Saito, Chie Tanaka, Yukako Morita, Kayo Nishimura, Eriko Kuramoto, Dong Xu Yin, Kazuharu Furutani, Makoto Okazawa, Yoshihisa Kurachi, Takeshi Kaneko, Yoshinobu Maeda, Takashi Yamashiro, Kenji Takada, Hiroki Toyoda and Youngnam Kang
    • 雑誌名

      eNeuro

      巻: 7 ページ: 1-19

    • DOI

      10.1523/ENEURO.0138-16.2016

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The Brain Mechanisms Underlying the Perception of Pungent Taste of Capsaicin and the Subsequent Autonomic Responses2016

    • 著者名/発表者名
      Kawakami S, Sato H, Sasaki AT, Tanabe HC, Yoshida Y, Saito M, Toyoda H, Sadato N, Kang Y
    • 雑誌名

      Frontiers in human neuroscience

      巻: 9 ページ: 720: 1-16

    • DOI

      10.3389/fnhum.2015.00720

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Enhanced lateral inhibition in the barrel cortex by deletion of phospholipase C-related catalytically inactive protein-1/2 in mice2015

    • 著者名/発表者名
      Toyoda H, Saito M, Sato H, Kawano T, Kawakami S, Yatani H, Kanematsu T, Hirata M, Kang Y
    • 雑誌名

      Pflugers Archiv : European journal of physiology

      巻: 467(7) ページ: 144-156

    • DOI

      10.1007/s00424-014-1592-1

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Generation of resonance-dependent oscillation by mGluR-I activation switches single spiking to bursting in mesencephalic trigeminal sensory neurons2015

    • 著者名/発表者名
      Chung G, Saito M, Kawasaki Y, Kawano T, Yin D, Lee S, Kogo M, Takada M, Bae YC, Kim JS, Oh SB, Kang Y
    • 雑誌名

      European Journal of Neuroscience

      巻: 41(8) ページ: 998-1012

    • DOI

      10.1111/ejn.12858

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Anandamide-induced network oscillation in the insular cortex implicated in taste-driven feeding2015

    • 著者名/発表者名
      Youngnam Kang
    • 学会等名
      Neuroscience 2015, annual meeting of Society for Neuroscience
    • 発表場所
      Chicago, USA
    • 年月日
      2015-10-17 – 2015-10-21
    • 国際学会
  • [備考] 脳内麻薬アナンダミドが食欲を増進する高次脳機能メカニズムを解明

    • URL

      http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2016/20160901_1

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-01  

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