研究課題
脊髄内d6交差型抑制性介在ニューロンが、ゼブラフィッシュ幼魚の遊泳運動の体の動きの左右相反抑制に関わるニューロンであることを明らかにすることが平成28年度の大きな目標であった。平成27年度までの実験で、すでにこれらのニューロンが、遊泳運動中に同側の運動ニューロンと同期して発火し、また、反対側の運動ニューロンと直接抑制性のシナプス結合していることを見いだしていた。平成28年度は、d6交差型抑制性介在ニューロンの重要性をより直接的に示すことに重点をおいて研究を進めた。具体的には、脊髄内d6交差型抑制性介在ニューロンにジフテリア毒素を特異的に発現させることによって、当該ニューロン群を除去し、得られた魚の表現型を調べた。左右相反抑制が消失、あるいは現象している場合、遊泳運動の際に、左右の運動ニューロンが同時に発火してしまうことが期待される。実際に、左右の運動ニューロンの活動を、運動ニューロンの軸索から細胞外記録を取る電気生理学的解析により、このような表現型がしばしば現れることが分かった。また、ハイスピードカメラにより、幼魚の行動の観察を行った結果、遊泳運動が非常にぎこちなくなっていることが示された。この結果は、左右の筋肉の同時収縮がしばしば起こってしまっていることを強く示唆している。これらの研究結果より、d6交差型抑制性介在ニューロンが遊泳運動の際に、左右の相反抑制にきわめて重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
d6交差型抑制性介在ニューロンが遊泳運動の際に、左右の相反抑制にきわめて重要な役割を果たしていることを明らかにすることができたため。
今後は、脊髄内d6交差型抑制性介在ニューロンをジフテリア毒素によって除去した魚の表現型をさらに詳しく調べる。具体的には、左右両側の筋肉細胞からの膜電位イメージングを行うことを計画している。
当初計画では、平成28年度中に、光遺伝学の手法を用いて、左右交差型介在神経細胞の活動を人為的に制御することによりその機能を調べる予定であった。しかし、光遺伝学実験に必要なデジタルマイクロデバイスを用いて任意の場所に光照射を行う顕微鏡が故障し、実験計画に遅延が生じた。
デジタルマイクロデバイス制御による顕微鏡を用い、光遺伝学の手法を利用して、左右交差型介在神経細胞の活動を人為的に制御することによりその機能を調べる。
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Scientific Reports
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10.1038/srep34991
Science
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