脊髄内d6交差型抑制性介在ニューロンが、遊泳運動の体の動きの左右相反抑制に関わるニューロンであることを明らかにすることが本年度の大きな目標であった。昨年度までの実験で、すでにこれらのニューロンが、遊泳運動中に同側の運動ニューロンと同期して発火し、また、反対側の運動ニューロンと直接抑制性のシナプス結合していることを見いだしていた。本年度は、d6交差型抑制性介在ニューロンの重要性をより直接的に示すことに重点をおいて研究を進めた。具体的には、脊髄内d6交差型抑制性介在ニューロンをジフテリア毒素によって除去し、得られた魚の表現型を調べた。左右相反抑制が消失、あるいは現象している場合、遊泳運動の際に、左右の運動ニューロンが同時に発火してしまうことが期待される。実際に、左右の運動ニューロンの活動を、運動ニューロンの軸索から細胞外記録を取る電気生理学的解析により、このような表現型がしばしば現れることが分かった。 さらに詳しい解析を行うため、左右両側の筋肉細胞からの膜電位イメージングを行う研究を行った。野性型においては、左右の筋肉は交互に膜電位の変動を示したが、脊髄内d6交差型抑制性介在ニューロンをジフテリア毒素によって除去した幼魚においては、そのパターンが乱れ、片側の筋肉の膜電位が高いまま推移するという表現型がしばしば見られた。 以上の結果は、d6交差型抑制性介在ニューロンが遊泳運動の際に、左右の相反抑制にきわめて重要な役割を果たしていることを示している。
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