研究課題/領域番号 |
26290015
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研究機関 | 公益財団法人先端医療振興財団 |
研究代表者 |
川内 健史 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員(上席・主任研究員クラス) (60397544)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エンドサイトーシス / 脳・神経 / カドヘリン |
研究実績の概要 |
発生期の大脳皮質において、脳室近辺で誕生した神経細胞は、多段階の移動を行い、脳表層の特定の場所に配置される。この多段階の移動の破綻は、様々な脳神経疾患と関連することが知られている。これまでに我々は、エンドサイトーシス経路の初期段階に重要な役割を果たす低分子量Gタンパク質の1つであるRab5が、神経細胞移動の特定の段階(移動の初期段階における多極性形態の形成と、ロコモーション移動と呼ばれる長距離移動)に必須であることを報告し(Neuron 2010)、さらに本研究により、神経細胞においてRab5はクラスリン依存性のエンドサイトーシス経路に関与すること、Rab5は、ロコモーション移動における神経細胞特異的な形態変化を制御することを同定した。これに対して、昨年度までに研究により、クラスリン非依存性エンドサイトーシスは、Rab5とは異なり、多極性細胞からロコモーション細胞への変換過程に必要であることが明らかとなった。平成29年度の研究では、このクラスリン非依存性エンドサイトーシスはCaveolin-1依存性であることを同定した。Caveolin-1の発現抑制により、細胞接着分子N-カドヘリンの細胞表面量が上昇したことから、Caveolin-1は、クラスリン非依存性エンドサイトーシスによりN-カドヘリンを細胞内に取り込むことがわかった。さらに、Caveolin-1によるN-カドヘリンの抑制は、多極性細胞からロコモーション細胞への変換過程を制御することも明らかとなり、多段階の神経細胞移動においてエンドサイトーシス経路が使い分けられていることが示された(in revision)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度までの研究により、大脳皮質形成における多段階の神経細胞移動過程において、クラスリン依存性経路とクラスリン非依存性経路が使い分けられていることを明らかにすることができた。このように、本研究で明らかにしようとした中心的な課題に対する結果は得られたことから、本研究は概ね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で明らかにしようとした根本的な問いに対する結果はすでに得られたが、得られたデータを論文として投稿したところ、様々な追加実験を要求されたため、査読者のコメントに応えるべく引き続き実験を進める。また、多極性細胞の形態形成に関する新たな知見も得られており、このデータも論文にまとめようとしている。次年度には、これら2報の論文を出版することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で明らかにしようとした根本的な問いに対する結果はすでに得られたが、これらのデータを論文として投稿したところ、様々な追加実験を要求されたため、引き続き実験を進める必要が生じた。また、多極性細胞の形態形成に関する新たな知見も得られており、このデータも論文にまとめようとしている。次年度には、これら2報の論文を出版することを目指す。
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