研究課題
脳の機能はニューロンの成熟とその維持に大きく依存する。網羅的な解析から、ヒト前頭野において老化に伴い著明に発現が減少する遺伝子として転写抑制因子RP58が同定された(第3位、1/5 に減少、Lu et al.,2004)。RP58の発現が半減するヘテロマウスを解析したところ若年時にすでに 長期増強が低下し(未発表)、老化マウスと類似していた。従って、ニューロンの可塑性を含む成 熟の維持にRP58の発現量が重要であると考えた。そこで、RP58の発現量を可逆的にコントロール で き る 改 変 マ ウ ス を 新 た に 作 製 し、「 R P 5 8 の 発 現 量 が ニ ュ ー ロ ン の 成 熟 維 持 を 制 御 し 、そ の 発 現 低 下がニューロンの老化に伴うを機能不全を引き起こす」という仮説を検証する。本研究は、脳の老化を克服するための抜本的な分子メカニズムの解明を目指すものである。RP58ヘテロ欠損マウスでは個々のニューロンでRP58を半減させることはできるが、ヒトの老齢化をマウスで再現するには、半減ではなく 1/5 に減少させる必要がある。そこで、FAST システム(Flexible Accelerated STOP TetO-knockin、Tanaka et al., 2009)を用いる。これまで、Stop-tetO コンストラクトのノックインマウスをRP58のATG上流で2種類作製した。ホモマウスを作製したところ、小脳失調様フェノタイプ師示した。これは、Stop配列によりRP58の転写産物が減少していることを推察させる。現在、Stop配列を除去するために、Floxマウスと交配中である。
2: おおむね順調に進展している
Floxマウスとの交配によるStop配列の除去が遅れているが、ホモマウスの作製により予想どおり小脳失調というRP58の発現減少を推察させるフェノタイプが見られていることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
今度、Floxマウスとの交配によりStop配列を除去し、CamKII-tTSマウスと交配し、ドキシサイクリンの投与量を調節することで、RP58の発現量を自在にコントロールする。そして、行動解析と組織解析から、RP58の脳機能に果たす役割を明らかにする。
遺伝子改変マウスの作成が予想より時間がかかったため、組織解析を次年度に回した。
遺伝子改変マウスの組織学的解析び使用する。
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Cereb Cortex
巻: 25 ページ: 806-816
10.1093/cercor/bht277.
http://www.igakuken.or.jp