研究成果の概要 |
久山町研究においてアルツハイマー病(AD)の有病率がこの20年間で著明に増加している。海馬のタウ蛋白蓄積について数理形態学的解析を行った結果、80歳以上で、タウ病理の増加傾向を認めた。その増加は、一部βアミロイド病理から独立していた。ついで大脳基底核(被殻)におけるタウ蛋白蓄積を解析した。被殻におけるタウ蛋白沈着はADで最も多くみられた。被殻病変がADにおけるパーキンソン病様症状の責任病変となり得ることが示唆された。その他にAD脳での発現変動が大きい分子(MET, EBP1, CRYM, ANXA1)について脳病理所見との関連を明らかにした。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
我々は生活習慣病関連因子が認知症、特にアルツハイマー病(AD)にどのような影響を及ぼしているかについて、病理疫学研究を長期的に継続している。本研究ではADの特徴的な脳病理変化である老人斑と神経原線維変化などについて、より定量的なデータベースを構築し、日本人における認知症のトレンドを明らかにした。さらにADの脳内での発現変動が大きい分子(MET, AEBP1, CRYM, ANXA1)について脳病理所見との関連を明らかにした。日本人一般住民の連続剖検によって得られた脳病理データベースの構築はその健診データと合わせてADの増悪因子の解明に資するユニークで貴重な資料となる。
|