研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位及び下位運動ニューロンの選択的変性を特徴とする進行性運動ニューロン疾患である。本研究は、複数のALS疾患発症要因の相互連関に関するこれまでの研究から見出された“p62シグナル系”を制御系候補として、p62が担う細胞内システム制御系の分子機構とその異常について解析し、最終的にALS発症に関わる運動ニューロン恒常性維持機構、及びその破綻の分子基盤を明らかにすることを目指すものである。平成28年度は、変異型SOD1-TG、p62-KO及びAls2-KOマウスの三重変異体マウスの解析から、変異SOD1-TGマウスにおいて、ALS2及びp62の機能喪失がいずれも疾患発症を加速させることを見出した。さらに、当該マウスモデルにおいてALS2とp62を同時に喪失させた場合には、各々の機能喪失効果が相加的に働き、疾患発症がさらに早まることを見出した。病理組織学的解析により、ALS2欠損が変異SOD1誘導性ユビキチン陽性凝集体及びp62凝集体の細胞外蓄積を加速させるのに対して、p62欠損はユビキチン陽性凝集体の運動ニューロン内での選択的蓄積及び細胞外蓄積の抑制をもたらすことも明らかとなった。すなわち、ALS2及びp62は共にオートファジー・エンドリソソーム系に関連するALS疾患責任遺伝子産物であるが、中枢神経組織内では両者は異なるメカニズムによりタンパク質分解を制御していることが明らかとなった。次に、個体でのp62過剰発現の効果、ならびに神経特異的なp62喪失の影響を解析するため、SOD1-TGとp62-TGマウスとの交配実験を開始した。その結果、予想とは異なり、p62過剰発現SOD1-TGマウスにおいては、逆に疾患症状を悪化させることが判明した。今後、p62過剰発現及び神経特異的p62欠損の影響については更なる分子病態解析を行う計画である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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