研究課題
アルツハイマー病(AD)の病理病態形成の分子機構を明らかにするため、申請者が開発した新規ADモデルマウス(APP-KI)を軸に、細胞内/外環境の品質管理機構(ネプリライシン(NEP)、カルパイン、オートファジー、ユビキチンプロテアソーム等の時空間制御の異なる蛋白質分解系)に関連する各因子の遺伝子改変マウスとの交配を行い、病理形成の加速・減速等の相互比較を行った。APP-KIとの交配相手としてNEP-KO、カルパスタチン(Cast)-KO、コンディショナルAtg7欠損(cAtg7-KO)マウスとの交配を行った。NEP-KO交配群、Cast-KO交配群では、神経炎症の亢進を伴うアミロイド病理の加速が認められた。また、行動学的解析においても、これら交配群において、学習能の低下・障害が進んでいることを明らかにした。一方で、cAtg7-KOマウスとの交配群では、以前のAPPトランスジェニックマウスとの交配で得られた結果と一部ことなる結果が得られており、APPトランスジェニックでの結果が一部artifactであった可能性を示唆した。ユビキチン関連については、老齢APP-KIマウスの脳内では、殆どユビキチンプロテアソーム系に異常が見出されなかったことを生化学的に検出した。まだ位置情報が欠落しているため、今後免疫組織化学的解析による検討が必要だろう。交配マウスを得ることに時間が掛かっているため、体外受精法を導入することで、解析速度を増加させる必要があると考えている。新規マウスの作製にも取りかかった(特許等の都合により、まだ詳細は明かせない)。これらを継続的に遂行することで当所の研究目的を十分に達成できると想定している。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に則っておおむね順調に進展している。一部、マウスの交配種を得るのに予定よりも長く時間を要しているが、今後体外受精等を行うことで時間の短縮を図る。また、in vivoイメージングのために放医研(樋口真人チームリーダー)へのマウスの移送も完了しており実験計画を遂行可能である。また、新規モデルマウスの開発に迫られたため、この準備も開始しており、次年度以降に継続する必要があるだろう。
交配群のマウスを得てからの解析はこれまで同様に、経時的に生化学的、免疫組織学的、行動学的解析を継続する。in vivo MRI解析も、放医研へマウスを移送が完了したことで、連携して解析を行う。アデノ随伴ウイルスの系の導入については、AAAV-NEPの導入の準備を行っている。これは、今後のサルを用いた前臨床試験にも結果を外挿する上でも重要な結果となるため継続して解析を進める。更に、新規モデルマウスの開発にも着手しており、これら新規マウスが得られ次第、APP-KIとの交配を随時行う。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
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