研究課題
分界条床核は、内側前頭前野、海馬台、扁桃体、腕傍核などから入力を受けるとともに、腹側被蓋野や外側視床下部などの脳部位に出力することにより、情動や摂食、内分泌などにかかわる情報統合と脳機能制御に重要な役割を果たしている。本年度は、前年度に行った光遺伝学を用いた神経路特異的な解析により不安情動惹起に関与することが明らかとなった扁桃体ー分界条床核神経路に焦点を当てて研究を進めた結果、本神経路の活性化により分界条床核内で神経活動亢進のマーカーであるc-Fosの発現が上昇することが明らかとなった。c-Fos発現を指標として本神経路活性化に関与する神経伝達物質・神経ペプチドを同定する実験に着手した。また、慢性疼痛による分界条床核内情報伝達の可塑的変化のメカニズムを明らかにするため、逆行性トレーサー注入により腹側被蓋野に投射する神経細胞を蛍光標識し、当該神経細胞における自発性IPSCを慢性疼痛モデル動物と対照動物の間で比較し、慢性疼痛モデル動物では当該IPSCが増強されていることを見いだした。このIPSC増強にかかわる神経伝達物質・神経ペプチドを同定する実験に着手した。さらに、様々な脳部位から分界条床核に入力する情報の統合に関わると考えられる分界条床核2型神経細胞の活動調節にかかわる情報伝達機構について検討し、アデニル酸シクラーゼーcAMPーPKA系が関与することを明らかにするとともに、グルタミン酸ーNO系の関与を示唆するデータを得た。以上の研究成果は、不安などの負情動生成の神経機構解明に貢献するとともに、うつ病や不安障害などの精神疾患の脳内メカニズム解明につながることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
前年度の研究成果をもとに、扁桃体ー分界条床核神経路の活性化により分界条床核内で神経活動亢進のマーカーであるc-Fosの発現が上昇することを明らかにした。また、病態モデル動物での神経機構の可塑的変化に関しても、慢性疼痛モデル動物の分界条床核において腹側被蓋野に投射する神経細胞での自発性IPSCが増強されていることを見いだした。さらに、情報統合に重要な役割を果たすと考えられる分界条床核2型神経細胞の活動調節にかかわる情報伝達機構について検討し、アデニル酸シクラーゼーcAMPーPKA系が関与することを明らかにした。以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
前年度までの研究で明らかになった扁桃体ー分界条床核神経路の活性化によるc-Fos発現に関与する神経伝達物質・神経ペプチドを同定する。また、慢性疼痛モデル動物の分界条床核における腹側被蓋野投射神経細胞での自発性IPSC増強にかかわる神経伝達物質・神経ペプチドを同定する。さらに、様々な脳部位から分界条床核に入力する情報の統合に関わると考えられる分界条床核2型神経細胞の活動調節にかかわる神経情報伝達機構についても前年度の研究で関与が示唆されたグルタミン酸ーNO系を中心に解析をすすめる。
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Neurosci. Lett.
巻: 600 ページ: 56-61
10.1016/j.neulet.2015.05.059
http://www.pharm.hokudai.ac.jp/yakuri/index.html