研究課題/領域番号 |
26290023
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
漆谷 真 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60332326)
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研究分担者 |
守村 敏史 滋賀医科大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20333338)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / TDP-43 / 抗体 / エピトープ / 先制医療 / プローブ |
研究実績の概要 |
平成27年度は昨年申請時に記載した計画に沿って下記の実験を行った 1)トランスジェニックマウスの作製、特に繁殖実験と表現型の評価(運動麻痺、認知機能低下の有無)、病理所見の解析。2)細胞内抗体(3B12A scFv)の解析、特に分解効率を高めるシグナル(内因性PEST, CL1,CMA)の分解効率に与える影響を解析。3)新たな低分子化合物ライブラリーを用いて、TDP-43の異常会合部位に結合する分子を変法ELISAを用いて選抜する。 その結果、1)遺伝子改変マウスが2ライン得られたが、うち1ラインは出産時の事故により死亡した。現在残った1ラインについて、凝集型TDP-43の発現、や表現系の解析を進めている。2)細胞内抗体については内因性のPEST配列が3B12A scFvの不安定性に寄与していること、核移行シグナルの変異型TDP-43を分解促進すること、CMAシグナル付与抗体も良好な分解効率を示すことを確認した。しかし凝集体モデルであるRRM1のシステイン変異体には結合はするものの明らかな分解促進効果を示さなかった。これらの結果から、凝集体を一旦アンフォールドさせることで細胞内抗体の効果が期待できると考え、現在Hsp70誘導因子に着目しコンビネーション治療戦略を立案し、薬剤の全バツと評価を進めている。3)新たに低分子ライブラリーを用いて、RRM1やRRM2と結合する分子のスクリーニングを開始した。ブロッキング溶液の使用法などを工夫することによって、新たなな候補分子の同定に成功し、現在スクリーニングを続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請は、代表者らがこれまでに同定したTDP-43のRNAの結合部位RRM1, RRM2の病態関連配列に対する独自の抗体を活用した、①低分子のハイスループットスクリーニングによる局所結合分子の同定、②Intrabodyの開発と効果検証、③新たなTDP-43のモデル動物の開発の3本柱からなり、ALS/FTLDの新たな分子標的治療法と診断法(プローブ)の開発を目指すものであるが、①については方法の微調整によって候補分子のスクリーニング効率を高めることに成功し、②については異所性局在をしたTDP-43に対し、3B12A細胞内抗体が有効である可能性が示され、さらに凝集体をアンフォールドさせる試薬を組み合わせることで分解効率を高めると言う新たな戦略が加わった。さらにモデルマウスについては1ラインの作出にとどまったため「おおむね」としたが、細胞質にTDP-43のヒト病理を模した封入体を再現したモデルは少なく、今後の解析結果に期待している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は以下の実験を予定している。 1) 病原TDP-43に結合する低分子ライブラリースクリーニングの継続:RRM1,RRM2ドメインで申請者らが明らかにした病原エピトープに結合する低分子化合物を独自の抗体を使った競合ELISAによって明らかにする。 2) 細胞内抗体の病原TDP-43の除去効率を高めるため、Hsp70などのシャペロンの誘導化での標的除去効率を検討し、さらに子宮内電気穿孔法を用いた胎児マウス脳での凝集体発現と細胞内抗体の効果、in vitroでの成果について論文化を目指す。 3)引き続き、マウスの繁殖、表現型解析、脳脊髄の免疫組織学的解析を行う。現在明らかな麻痺はないが、タンパク量や分布部位に問題があった場合は、凝集体モデルとしては極めて有望なため再度のインジェクションも考慮するが、in vivoの有効性については期限内に子宮内電気穿孔法にて検証可能と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変マウスの受託作成作業が予定より時間ヲ要したことと、繁殖時の不足の個体の死亡などによってマウスの繁殖実験に時間を要してしまった。そのため、当初予定していた国際学会での発表を行えなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
易凝集型TDP-43発現マウスの繁殖実験を進め、表現型と病理解析をすすめる。細胞内抗体のウイルスベクター作成を行い、これまでの成果について国際学会での発表を行う。
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