研究課題
内在性Nogo受容体アンタゴニストであるLOTUSの生理機能を利用した新しい神経再生治療法の創成を目的とし、LOTUSの細胞機能、および脊髄損傷モデル動物におけるLOTUSの役割を解析した。LOTUSは中枢神経系の再生を阻止するNogo受容体に結合し、Nogo受容体の5種のリガンド分子(神経再生阻害因子)の内、4種のリガンド分子に対して完全な拮抗作用を示すことが判明した(Kurihara et al., 2014)。以上から、LOTUSは強力な内在性Nogo受容体拮抗物質として機能することが明らかになった。他方、LOTUS遺伝子欠損マウス(LOTUS-KOマウス)を用いて脊髄損傷モデル動物を作製し、野性型マウスと比較検討したところ、マウスやラットなどの齧歯類が示す自発的な神経再生能がLOTUS-KOマウスでは欠如することが判明し、内在性の自発的神経再生能にLOTUSが深く関わることが判明した。次に、LOTUS過剰発現マウス(LOTUS-TGマウス)を用いて同様の解析を行ったところ、野生型が示す自然回復能を越える有意な機能回復亢進が認められた。これらのLOTUS-KOマウスおよびLOTUS-TGマウスにおける神経再生能の増減は、神経解剖学的解析においても同様に示された。更に、脊髄損傷後7日目以降になると、内在性LOTUSの脊髄患部周辺における発現量が激減することが明らかになった。野生型マウスにおける自然回復能は損傷後7日目以降で停滞することとLOTUSの発現量の減少が一致することから、LOTUS-TGマウスにおけるLOTUS過剰発現は、減少したLOTUSの発現を補填することになり、LOTUSは神経再生亢進作用を有することが明確となった。以上から、LOTUS発現の遺伝的背景の違いによって明確な差異が示され、LOTUSは神経再生に奏功することの確証を得た(論文作成中)。
2: おおむね順調に進展している
当初の平成26年度計画にあるLOTUS-KOマウスとLOTUS-TGマウスを用いた脊髄損傷モデル動物における解析のほぼ全容が終了した。一部の組織学的解析が現在遂行中であるが、論文公表に向けて十分な実験例数も揃ったため、現在論文作成中である。予想通り、LOTUS-KOマウスでは、マウスやラットなどの齧歯類が示す自発的な神経再生能が欠如することが判明し、内在性の自発的神経再生能にLOTUSが深く関わることが判明した。また、LOTUS-TGマウスでは、野生型が示す自然回復能を越える有意な機能回復亢進が認められ、LOTUSに神経再生亢進作用があることが明らかになった。一方、構造生物学的解析に供与するために必要なLOTUSタンパク質を大量精製する実験系については浮遊系動物細胞を用いる方法が適していることが判明し、目的の大量精製系の確立がほぼ終了した。
LOTUSの外来性導入効果の検討を行う。脊髄損傷モデル動物において外来性にLOTUSを導入する方法として以下の3種の方法を検討する。1)精製LOTUSリコンビナントタンパク質を患部に注入する方法、2)lotus遺伝子を患部に遺伝子導入する方法、3)LOTUS発現間葉系幹細胞を患部に移植する方法。1)では、脊髄損傷モデル動物作製時にオスミックミニポンプを患部近傍皮下に埋め込み、精製LOTUS(全長LOTUS、及びUA/EC機能ドメイン)を慢性的に微量注入して投与する。2)では、アデノウイルスを用いてlotus遺伝子を損傷患部に感染導入する。3)では、分泌型のlotus遺伝子を導入した間葉系幹細胞(具体的には臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞を検討中)を患部に移植する。これらの処置による運動機能回復および組織学的改善を検討し、LOTUSを用いた脊髄損傷治療法を創成する。一方、構造生物学的解析に供与するために必要なLOTUSタンパク質を大量精製系の確立がほぼ終了したので、X線構造解析を共同研究者の協力の下で行い、LOTUSの3次元構造を明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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http://yokohama-cu-mbs-lotus.jp/