研究課題
自閉症患者におけるCAPS2発現の解析から見つかった本来稀な選択的スプライシング亜型であるエクソン3欠失型(deletion of exon3, 以下dex3と称す)を発現する遺伝子改変マウスCAPS2-dex3を用いて、小脳の発達と機能への影響について解析した。Dex3は小脳顆粒細胞の軸索(平行線維と上行線維)には局在せず、BDNFやNT-3の軸索局所における輸送と分泌が低下した。また、小脳顆粒細胞の生後増殖と細胞移動の遅滞、虫部の低形成、平行線維―プルキンエ細胞間シナプスのアクティブゾーンから約300 nm以上離れた位置のシナプス小胞の増加とpaired-pulse facilitationの減少などが示された。これらの結果から、dex3を異常に発現すると小脳の発達とシナプス機能に障害を生じることが明らかになった。自閉症患者で多く報告される小脳の異常との関連性について今後の解析が待たれる。また、CAPS2 KOマウスにおいて、副腎皮質由来のステロイドホルモン・コルチコステロン(CORT)の慢性投与によって誘導される血清中のCORT、インスリンおよびレプチンの濃度の上昇が起きないことを示した。一方、CORT誘導の不安やうつ様症状を正常とほぼ同じく呈した。これらの結果から、慢性マイルドストレスによって誘導される内分泌応答にCAPS2が関与している可能性が示唆された。さらに、有芯小胞による分泌の可視化と動態について解析を行った。BDNFについては、海馬培養ニューロンの軸索と樹状突起、シナプスとシナプス外部における局所的な分泌にCAPS2が関与すること示唆する実験データを得た。オキシトシンとバソプレシンについては開発中である。クロモグラニンAについては、pH感受性の橙色蛍光タンパク質mOrange-2を融合して神経細胞へ導入し、脱分極刺激依存的な分泌動態の可視化が可能になった。
1: 当初の計画以上に進展している
CAPS2とCAPS2-dex3の分泌制御機能、脳神経発達における役割、行動における重要性などが明らかにし、目的からさらに発展させた成果も得られて達成度は高い。オキシトシンとバソプレシンはいずれも9アミノ酸の短鎖ペプチドで内部にS-S結合をもつことや、これらのペプチドホルモンは前駆体からプロセシングを受けて分泌されることなどから、プレプロホルモンを構成するニューロフィジンを利用した分泌蛍光プローブをデザインすることも検討する。クロモグラニンの分泌は可視化できるようになったが、動態の解析までにはより詳細な解析には遺伝子導入効率や蛍光強度およびシグナルとノイズ比の改良などが必要である。カテコールアミンのアンペロメトリー解析は、予算上解析装置の導入が困難なために、蛍光偽神経伝達物質FFN511の蛍光イメージング解析で代用することにする。
CAPSの有芯小胞分泌に関連する構造・機能・発現を詳細に解析すると共に、動物モデルを用いた機能解析、シナプス生理や行動表現型などの解析を行い、有芯小胞膜輸送経路の生物学的な意義の探求を行う。昨年度の研究成果をさらに発展させ、また上記に示したような変更を行い、特に下記の項目について解析を実施する。CAPSタンパク質の構造・機能相関の解析CAPS2 KOとdex3マウスにおける有芯小胞分泌と表現型の解析CAPS1条件的遺伝子改変マウスのシナプス生理と有芯小胞分泌の解析
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
Scientific Reports
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http://www.tus.ac.jp/fac_grad/p/achievement.php?64da
http://www.lmn.bs.noda.tus.ac.jp/#!furuichi-info/c1hvv