研究課題/領域番号 |
26290026
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
古市 貞一 東京理科大学, 理工学部, 教授 (50219094)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有芯小胞 / CAPSタンパク質 / BDNF / コルチコステロン / 発達障害 |
研究実績の概要 |
分泌制御タンパク質CAPS2はインスリン分泌を調節し糖尿病との関連が示唆されている。今回、CAPS2を欠損した遺伝子改変マウスでは慢性ストレス負荷時におけるインスリン分泌の低下に加えてストレスホルモン応答に異常がみられることが明らかとなった(Sei. Rep, 2015)。CAPS2 KOマウスの膵臓病理のイメージング解析から変性部位が明らかとなった(未発表)。分泌制御タンパク質CAPS1がシンタキシン結合部位付近のC末端領域において低分子量GTPaseファミリーの一種であるSeptinのタイプ1, 2, 4, 6, 8-11と相互作用することを質量分析法と免疫共沈降法で明らかとし、細胞内でも共局在することを免疫細胞化学的染色によるイメージング解析によっても明らかにした(Neurosci. Lett., 2016)。このことから、分泌小胞の細胞内輸送と開口放出の毛色においてCAPS1-Septinの複合体とシンタキシンの相互作用が関係することが示唆される。クロモグラニンAについては、pH感受性の橙色蛍光タンパク質mOrange-2を融合して神経細胞へ導入し、脱分極刺激依存的な分泌動態の可視化が可能になり、データを集積中である。脳内モルヒネ様ペプチド・ダイノルフィンの分泌を可視化する蛍光タンパク質を開発した(未発表)。オキシトシンとバソプレシンについては開発中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CAPS2とCAPS2-dex3の分泌制御機能、脳神経発達における役割、行動における重要性などが明らかにし、目的からさらに発展させた成果も得られて達成度は高い。オキシトシンとバソプレシンはいずれも9アミノ酸の短鎖ペプチドで内部にS-S結合をもつことや、これらのペプチドホルモンは前駆体からプロセシングを受けて分泌されることなどから、プレプロホルモンを構成するニューロフィジンを利用した分泌蛍光プローブをデザインすることも検討する。クロモグラニンの分泌は可視化できるようになったが、動態の解析までにはより詳細な解析には遺伝子導入効率や蛍光強度およびシグナルとノイズ比の改良などが必要である。カテコールアミンのアンペロメトリー解析は、予算上解析装置の導入が困難なために、蛍光偽神経伝達物質FFN511の蛍光イメージング解析で代用することにする。 理由 マウス系統の海外からの輸送手続きと実験に利用できるまで個体数を繁殖までに時間を要した。従って、これら飼育マウスを使用した社会行動テストの確立、引き続くトランスクリプトーム解析まで全体的な計画の遅れがあった。しかし、それ以外は比較的順調に準備が進められ、モデルマウスを用いた関連研究が進むなど、遅れの中でも一定の達成度は確保できた。
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今後の研究の推進方策 |
CAPSの有芯小胞分泌に関連する構造・機能・発現を詳細に解析すると共に、動物モデルを用いた機能解析、シナプス生理や行動表現型などの解析を行い、有芯小胞膜輸送経路の生物学的な意義の探求を行う。昨年度の研究成果をさらに発展させ、また上記に示したような変更を行い、特に下記の項目について解析を実施する。 CAPSタンパク質の構造・機能相関の解析 CAPS2 KOとdex3マウスにおける有芯小胞分泌と表現型の解析 CAPS1条件的遺伝子改変マウスのシナプス生理と有芯小胞分泌の解析
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では予期しないマウスの妊娠率の低さと出産後の母マウスの仔食い問題発生のため、統計的解析に十分な頭数のマウスを入手することができずに計画遂行に遅れが出た。また、論文投稿を行ったが、世界で競合する2グループから類似の論文掲載予定がわかり、当初予定していなかった追加実験が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
主に研究計画の延長でその達成に必要となる消耗品費(試薬や実験器具等の購入)、実験動物費(マウスの飼育及び購入)、その他(英文校正と論文投稿経費)を計上する。
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