研究実績の概要 |
新規の自然突然変異マウスであるWSマウスの遺伝子変異部位を多型解析とfluorescence in situ hybridization (FISH)により解析した結果、第5番染色体上の9遺伝子(Kit, Kdr, Srd5a3, Tmem165, Clock, Pdcl2, Exoc1, Cep135)を含む約1.2 Mbのゲノム領域が欠損していることが明らかとなった。次に、WSマウスの致死時期を詳細に解析したところ、着床後すぐに致死が生じていることが明らかとなった。また、初期胚における遺伝子発現解析から、WSマウスにおける致死の原因遺伝子の第一候補としてExoc1遺伝子を選び出した。このExoc1遺伝子のノックアウトマウスを作製・解析したところ、WSマウスと同様に着床前後で致死が生じることが明らかとなった。 さらに、WSマウスにおいて欠損しているExoc1遺伝子以外の遺伝子群のpolygenicな影響が、初期胚の発生に関わっている可能性を検討するため、CRISPR/Cas9システムを利用して、7遺伝子(Kit, Kdr, Srd5a3, Tmem165, Clock, Pdcl2)を含む約1.1 Mb のゲノム領域を欠損するマウス(WEマウス)を新たに作出した。表現型解析の結果、このWEマウスにおいては着床時期の致死が観察されなかった。 以上のことから、WSマウスで観察される着床時の致死の原因は、Exoc1遺伝子の単一欠損であると結論付けた。 加えて本年は、初期胚におけるExoc1の機能を今後さらに解析していくために、Exoc1の遺伝子発現をlive imagingすることが可能な蛍光レポーター遺伝子ノックインマウスの作製を行った。
|