研究課題/領域番号 |
26290031
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
庫本 高志 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20311409)
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研究分担者 |
椛島 健治 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00362484)
吉見 一人 国立遺伝学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (50709813)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / ラット / 疾患モデル / ステロイド / タクロリムス / 引っかき行動 |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎に苦しむ多くの患者がいる。優れたモデル動物があれば、治療薬や治療法の開発が格段に進む。研究代表者は、自ら開発したラット系統(KFRS4/Kyo)が、6か月齢以上になると、かゆみを伴う皮膚炎を自然発症し、血中IgEが上昇することを発見し、KFRS4/Kyoを新たなアトピー性皮膚炎のモデルとして樹立した。 平成27年度は、KFRS4ラットの薬剤評価への応用性を検討した。 具体的には、KFRS4ラットに代表的なアトピー性皮膚炎治療薬であるステロイド軟膏とタクロリムス軟膏を塗布し、皮膚炎の発症、引っかき行動、IgE値、病理検査を実施した。KFRS4ラット(4ヵ月齢、雌)を4群に分け、それぞれ、無処置群(n=8)、ステロイド群(n=8)、タクロリムス群(n=8)、保湿剤群(n=8)とした。薬剤を週に3回、7ヵ月齢まで背頸部に塗布した。4週間ごとに、皮膚炎症状と引っかき行動を観察し、採血した。7ヵ月齢時に、麻酔下で安楽死処分後、採血、リンパ節、皮膚の採取を行った。 タクロリムス群、保湿剤群では、皮膚炎症状、引っかき行動とも、改善効果は見られる、無処置群と同等であった。一方、ステロイド群では、皮膚炎症状、引っかき行動とも、顕著な改善効果が見られた。皮膚組織は、タクロリムス群、保湿剤群では、顕著な炎症細胞(リンパ球、好酸球、マスト細胞)の浸潤が観察された。一方、ステロイド群では、これら炎症細胞の浸潤は見られなかった。血中IgEは、ステロイド群で低い傾向にあったが、優位差は得られなかった。 以上のことから、KFRS4の皮膚炎はヒトアトピー性皮膚炎と同様、ステロイド感受性であり、KFRS4ラットはステロイド剤の評価系に利用できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の目的は、痒みを伴う皮膚炎を自然発症するラット(KFRS4ラット)を対象とし、KFRS4/Kyoの皮膚炎の臨床、病理、免疫、皮膚バリア機能の評価を行い、KFRS4/Kyoを新たなアトピー性皮膚炎のモデルとして樹立する。そして、抗炎症剤、皮膚バリア保護剤、かゆみ止めなどのアトピー性皮膚炎治療薬を用いた治療試験を行い、アトピー性皮膚炎の治療試験法を確立する。さらに、感作物質を用いた皮膚炎誘発系を適用し、治療試験法の効率化を目指す。 昨年度までに、KFRS4ラットをアトピー性皮膚炎モデルとして樹立し、また、ステロイド軟膏の評価試験系に利用できることを示した。このように本研究課題は、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
KFRS4ラットの皮膚炎は、6ヵ月齢頃から発症しはじめる。そのため、より効果的なアトピー性皮膚炎治療薬の評価系として利用ためには、早期の発症が望まれる。そこで、皮膚炎誘発剤であるジニトロクロロベンゼン(DNCB)を利用して、より効果的な皮膚炎誘発を目指す。 また、KFRS4の皮膚炎は雌雄差があり、雌で発症頻度が高い。その原因を探るために、卵巣を摘出を行い、性ホルモンの効果を検討する。さらに、環境の効果を検討するために、KFRS4をSPF化して、皮膚炎が発症するか否かを検討する。
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