研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎に苦しむ多くの患者がいる。優れたモデル動物があれば、治療薬や治療法の開発が格段に進む。研究代表者らは、自ら開発したラット系統(KFRS4/Kyo)が、6か月齢以上になると、かゆみを伴う皮膚炎を自然発症し、血中IgEが上昇することを発見し、KFRS4/Kyoラットを新たなアトピー性皮膚炎のモデルとして樹立した。 平成28年度は、KFRS4ラットをより効率的な皮膚炎モデルとして確立することを目的とした。具体的には、ハプテンであるジニクロロベンゼン(DNCB)を耳に塗布し、皮膚炎(浮腫)が効率的に誘発されるか否かを検討した。 皮膚炎誘発の方法は、感作として、KFRS4の耳介にDNCBを2回塗布した(day1, 3)。その後、7回DNBCを塗布して(day7, 9, 11, 14, 16, 18, 21)、皮膚炎を誘発した。対照系統としてKFRS4ラットの親系統であるPVGラットを用いた。炎症の程度は、耳介部の厚さを測定することで評価した。最終塗布日に、動物を麻酔下で屠殺し、採血してIgEを測定した。また、耳介部の病理標本を作製し、皮下に浸潤している、好酸球、マスト細胞を観察、定量した。 DNCBの塗布により、PVGではday11から、KFRS4ではday16から、耳介に炎症(浮腫)を誘発できた。炎症部位では、KFRS4、PVGとも、マスト細胞が浸潤していた。しかし、浸潤マスト細胞数は、PVGの方がKFRS4よりも多かった。一方、好酸球は両系統ともほとんど浸潤が観察されなかった。血中IgE濃度は、PVGの方が高かった。以上の結果より、KFRS4ラットは、ハプテン誘発皮膚炎に対し、PVGよりも感受性が低いことが判明した。
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