研究課題/領域番号 |
26290032
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
五十嵐 樹彦 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (90467431)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | エイズ / 抗ウイルス剤 / 多剤併用療法 / SIV / リザーバー / リンパ球 / リバウンド |
研究実績の概要 |
CD4陽性T細胞は、HIVのリザーバーとして重要と考えられている。本研究では、cART中に抗CD4抗体を投与して全身のCD4陽性T細胞を減少させることにより、cART中断後のリザーバーからのリバウンドを抑制できるか調べることを目的とした。平成26年7月、抗CD4抗体投与条件設定のための予備実験の過程で、抗体投与サルのリンパ節において当初予定していたよりも多量の抗体を用いなければ、目的とするCD4陽性細胞の減少効果が確認できないことが判明したため条件検討を追加で行うこととした。その結果、40mg/kg/週の抗体量を4回投与することにより目的とするリンパ節でのCD4陽性細胞の減少効果が確認できた。本実験では、念のため40mg/kg/週で8回投与することとした。4頭のアカゲザルにSIVmac239を感染させると、感染2週後に血中ウイルス量は10の6乗から10の7乗コピー/mlのピークに達し、感染10週後には10の4乗から10の6乗コピー/mlのセットポイントに移行した。その後、cART治療+抗体投与群の3頭に対しcART治療を開始すると、3頭中2頭で血中ウイルス量が感染20週後に検出限界以下に抑制され、残り1頭は10の3乗コピー/mlまで減少した。血中ウイルス量が十分に減少したため、感染21週後から抗CD4抗体の投与を開始した。40mg/kg/週で計8回投与後、末梢血中のCD4陽性T細胞は枯渇し、リンパ節中と直腸中のCD4陽性T細胞は抗体投与前と比較し、それぞれ75~89%、85~98%減少した。すなわち、抗CD4抗体投与により全身のCD4陽性細胞数が減少したことを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗CD4抗体投与条件設定のための予備実験の過程で、抗体投与サルのリンパ節において当初予定していたよりも多量の抗体を用いなければ、目的とするCD4陽性細胞の減少効果が確認できないことが判明し、条件検討を追加で行う必要が生じたため。
|
今後の研究の推進方策 |
投与抗体量を40mg/kg/週で8回とすることで、SIV239感染cART治療群のアカゲザルで当初計画した水準のCD4陽性細胞抑制を達成したので、今後は当初の予定通り、抗体による一過性CD4陽性細胞抑制から回復した時点でcARTを中断し、リバウンドへの影響を検索する
|
次年度使用額が生じた理由 |
抗CD4抗体投与条件設定のための予備実験の過程で、抗体投与サルのリンパ節において当初予定していたよりも多量の抗体を用いなければ、目的とするCD4陽性細胞の減少効果が得られないことが判明した。その結果、投与量について条件検討を3ヶ月行った上、条件設定を再度行う必要が生じ、計画全体が遅延したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初計画で平成26年度8月に開始予定だった感染実験が平成27年1月開始に遅延したため、次年度使用額は感染実験、実験結果の解析、研究取りまとめにかかる物品費、人権費・謝金、旅費等に充てる計画である。
|