研究課題
本研究では、CRISPRを用いた実験用ラットにおける新しいゲノム編集基盤技術の開発を目指している。平成26年度は、1)遺伝子ノックアウト、2)SNP置換、十数塩基挿入ノックイン、3)大規模領域(9K-bp)欠失のノックアウトを行った(Yoshimi et al. Nat Commun 2014)。平成27年度は、引続きゲノム編集基盤技術の開発として、4)長鎖一本鎖DNA(lsODN)精製法を新たに確立し、Thy1遺伝子を標的とした効率的なGFP遺伝子(1K-bp)ノックインを行った。さらに、5)二つのgRNA(はさみ)と2つのssODN(のり)を利用して、効率的に大きなサイズのプラスミドDNAをノックインすることができる2ヒット2オリゴ法(2H2OP)を開発した。2H2OP法により、大規模染色体領域(BAC:200K-bp)の標的ノックインに成功した。また、大規模染色体領域の置換(ラットCyp2d遺伝子クラスターとヒトCYP2D6遺伝子の入替え)に成功した。以上の研究成果を取りまとめて、英国科学誌Nature Communications(英国ネイチャー出版グループ オープンアクセス誌)に報告した。また、関連する研究内容を査読付き英文論文7編、図書3編に取りまとめた。2H2OP法については特許出願を行った。招待講演等として国際1回、国内8回の講演を行った。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は、ラットにおけるゲノム編集として、CRISPR/Cas9を利用したノックアウト、および一本鎖DNA(ssODN)によるノックイン技術の開発を行った。そこで平成27年度は、さらに大きなサイズの遺伝子あるいは染色体領域をノックインするために、二つの新しい方法:lsODN法と2H2OP法の開発を行った。lsODNを利用して、ラットThy1遺伝子の下流にGFP遺伝子を正確にノックインすることに成功し、2H2OP法により、ラットSirpa遺伝子上にヒトSIRPA遺伝子ゲノム領域(200K-bp)をノックインすることに成功した。以上のことから、平成27年度開始当初の研究計画に一部の変更はあったものの、おおむね順調に進展していると自己評価する。
本研究では、CRISPRを用いた実験用ラットにおける新しいゲノム編集基盤技術の開発を目指している。平成26年度、CRISPR/Cas技術により、1)ラットTyr遺伝子のノックアウト、2)Tyr遺伝子ミスセンス変異のSNP置換、Asip遺伝子欠失変異の十数bp挿入ノックイン、3)Kit遺伝子レトロトランスポゾン(9K-bp)の大規模欠失、平成27年度は、4)Thy1遺伝子下流にGFP遺伝子(1K-bp)ノックイン、5)ヒトSIRPA遺伝子ゲノム領域(200K-bp)のノックイン、およびヒトCYP2D6遺伝子とラットCyp2d遺伝子置換を行った。引続きゲノム編集基盤技術の開発として、6)長鎖一本鎖オリゴ(lsODN)を利用したCreノックインラットの作製、7)遺伝子のエクソンを挟んだ2箇所にloxP配列を同時にノックインすることで、floxラットの開発を行う。また、8)アデノウイルスベクターやレンチウイルスベクターによりgRNAを導入することで、in vivoゲノム編集を検討する。最後に、9)これまでに開発してきたラットゲノム編集技術を用いて、新規パーキンソン病モデルラットの開発を行う。
研究は予定通り進んだがより発展させるため次年度の予算と合算して執行する。
研究目標達成のため試薬等を購入する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 9件) 図書 (3件) 備考 (1件)
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