研究課題
1)手術摘出した乳癌検体由来の癌細胞を培養する条件を検討して2週間程度培養できる条件を設定した。10例の検体の中から遺伝子発現パターンによりBasal型乳癌と判断できる例についてTNFa刺激あるいはJAG1刺激後に癌幹細胞の比率を解析した。その結果手術検体においてもこれらの刺激により癌幹細胞の比率の増加が観察された。即ちin vivoにおいてもNF-kB-JAG1-NOTCHという経路が癌幹細胞の維持に関与していることを強く示唆するデータを得た。2)トリプルネガティブ乳癌(TNBC)の悪性化におけるNF-kBの役割を解明するためにNF-kBの標的遺伝子を複数同定した。それらの遺伝子をTNBC乳癌細胞株に発現後、免疫不全マウスに移植し、腫瘍形成に対する促進効果の有無を解析した。その結果NF-kB標的遺伝子の一つであるトロポモジュリン1(TMOD1)が腫瘍形成を促進することが明らかとなった。TMOD1による増殖促進は通常の二次元培養では観察されずコラーゲン基質中での三次元培養において観察された。詳細な機構解析によりTMOD1がb-cataninを安定化し、さらにそのb-cateninがMMP13の発現を促進することで腫瘍形成が促進することが判明した(Ito-Kureha et al. Cancer Res. 2015)。癌幹細胞の維持やNOTCHシグナルとの関連については現在検討中である。3)癌幹細胞分画と非癌幹細胞分画を分取しその遺伝子発現やシグナル活性化の違いを解析する計画は実験条件の検討を実施中である。
2: おおむね順調に進展している
手術検体におけるNOTCHシグナルと癌幹細胞との関連については例数がもう少し必要なものの培養細胞で見出したNF-kB-JAG1-NOTCH経路が機能していることを示す結果を得ている。また、癌幹細胞の維持やNOTCHシグナルとの関連については現在検討中ではあるものの、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)の悪性化におけるNF-kBの役割としてTMOD1の誘導を見出した。TMOD1が治療の標的となる可能性を示唆できたことは癌研究に大きく貢献できたと考えられる。
複数のTNBC細胞株において癌幹細胞分画と非癌幹細胞分画を分取する条件が設定できたので、今後両分画におけるNOTCHシグナルの活性化の量的質的な違いを当初の計画に従って解析する。
計画開始前から特定のTNBC細胞株において癌幹細胞分画と非癌幹細胞分画を分取することに成功していたが、TNBC以外の乳癌細胞やTNBCでも細胞株によっては異なる分取条件の設定が必要であることが判明し時間を要した。条件検討をほぼ終えたのでその後の計画を次年度に実施することにした。
1)Basalタイプ乳癌細胞株におけるNOTCHの癌幹細胞特異的な標的遺伝子を同定する。2)NOTCH1~4のうちどの受容体が主要な役割を果たしているかを解明する。3)癌幹細胞特異的なNOTCHシグナルの増幅がシグナルのどの段階で起こっているのかを解明する。4)uminal及びClaudin-lowタイプ乳癌細胞株における、NOTCHの標的遺伝子を同定する。5)Luminal及びClaudin-lowタイプ乳癌細胞株におけるNOTCHシグナルの増幅の有無を解析する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
Cancer Res
巻: 75 ページ: 62-72
10.1158/0008-5472.CAN-13-3455