研究課題
慢性骨髄性白血病(CML)幹細胞はCML細胞の供給源となる細胞であり,抗がん剤による治療後に残存したCML幹細胞は再発の原因となる.本研究では,TGF-βシグナル伝達分子Smad3のリン酸化制御によるCML幹細胞の維持機構を解明することを目的とする.平成26年度,テトラサイクリン制御型CMLマウスモデルを構築し,最も未分化な長期CML幹細胞における Smad3のリン酸化サイトを解明した. 平成27年度,当該Smad3のリン酸化制御が,生体内での長期CML幹細胞の維持に必須な役割を担うことを解明した.さらに,このSmad3のリン酸化を行う上流のキナーゼを解析した結果,p38MAPKがSmad3のリン酸化を担うことを解明した.平成28年度,Smad3のリン酸化阻害によるCML幹細胞治療薬の開発を指向し,p38MAPK阻害剤によるCML幹細胞のin vitroでのコロニー形成能の抑制効果を解析した.上記CMLマウスモデルから分離したCML幹細胞に対してp38MAPK阻害剤を処理するとコロニー形成能力を抑制できることを発見した.さらに,このマウスCML幹細胞にチロシンキナーゼ阻害剤 (TKI) イマチニブとp38MAPK阻害剤を共処理すると,イマチニブの単剤処理を行った場合と比較して,CML幹細胞に対する増殖抑制効果を向上できることが明らかとなった.そこで,CMLマウスモデルを用いて,p38MAPK阻害剤の治療効果を解明することを目的とした前臨床試験を実施した.その結果,CML幹細胞を移植したマウスにp38MAPK阻害剤を投与すると,CMLの発症を改善できることを発見した.また,TKI (ダサチニブ) に加えてp38MAPK阻害剤の上乗せ投与を行うと,ダサチニブを単剤投与した場合と比較して,CMLマウスモデルのCMLの発症や再発を軽減できることが明らかになった.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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