研究実績の概要 |
S100A8/A9新規受容体を加えた7つの受容体群{古典的受容体(TLR4, RAGE)、新規受容体(EMMPRIN, NPTN,R-A仮称, R-M仮称, R-E仮称)}をS100-Soil Sensor Receptors (SSSRs)と命名し、新規受容体群に関してS100A8/A9リガンドとの結合性を解析した。当年度では、結合性をはじめその本体が明確となっていないR-A, R-M, R-Eに関して検討を行った。293細胞よりR-A, R-M, R-E高純度組み換えタンパク質を作製し、まずS100A8/A9との結合性を比較検討した。その結果、いずれも同等の親和性を示すことが判明した。次にS100A8/A9結合による細胞の形質変化、シグナル伝達様式についての検討を行った。受容体の野生型、ドミナントネガティブ体をメラノーマ細胞に発現させ検討したところ、R-A, R-M, R-Eのいずれもメラノーマの増殖性に大きな影響を与えないが、S100A8/A9に反応して走化性、浸潤性を顕著に促進されることが明らかとなった。下流シグナル伝達の解析の結果、いずれも共通してNF-kB(炎症、サバイバルに関与)とCdc42(走化性、浸潤性に関与)の活性化を誘導することが判明した。特にR-Mがこれらの活性化に顕著であった。さらに動物実験の結果、R-Mの機能抑制がメラノーマの肺への転移を特に抑制する結果となった。これらの受容体の発現状態を、メラノーマ組織切片で検討したところ、浸潤している腫瘍の周囲で特に顕著であった。メラノーマに関しては、R-Mの発現が共通して上昇していることから、R-Mが周囲の正常組織からのS100A8/A9を受け、メラノーマ腫瘍塊の進展に関わっている事が示唆された。他の受容体に関しては、メラノーマ以外の転移性固形がんで上昇していることもわかってきており、がん種に応じた転移への関与が考えられた。
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