研究課題
(1)新規受容体の下流信号伝達:NPTNβの細胞質領域にはGRB2アダプタータンパク質がS100A8/A9刺激によりリクルートされ、ERKリン酸化酵素を介した足場非依存性の増殖促進(浮遊性の増殖)を誘導することが判明した。一方、MCAMは、浸潤、遊走に重要で、S100A8/A9に応じてその活性が非常に高まることが判明した。更に、NPTNβ、MCAMによって活性化される転写因子群をそれぞれ見出すに至った。これらの内、がん進展に重要な役割を担っている責任転写因子を同定することができた。(2)受容体発現のプロファイリング:検討したがん種の中で、RAGE、EMMPRINは比較的広範囲がん種に発現していること、TLR4は子宮頸部がんや膀胱がんに非常に高いレベルで発現すること、NPTNβは、転移性肺がんに特に高いレベルで発現すること、MCAMは、転移性メラノーマと転移性乳がんに特に高いレベルで発現すること、が判明した。(3)S100A8/A9(Soil signal)-受容体(Soil sensor: SSSRs)のがん転移への意義:確立しているメラノーマの尾静脈投与によるマウス肺転移実験において、MCAMを移植がん細胞に過剰発現させることにより、肺転移性が顕著に増加し、逆にMCAMドミナントネガティブ体(機能阻害)の過剰発現により肺転移性が顕著に減少した。当動物実験より、MCAMは、その発現が上昇しているがん種においては、治療の有効な分子標的となりうる可能性があることが示された。
2: おおむね順調に進展している
本年度での達成目標は、(1)新規SSSRsの下流信号伝達を解析すること、(2)新規SSSRsの発現のプロファイリングを成し遂げること、(3)新規SSSRsのがん転移における意義を動物モデルで検討すること、である。研究実績の概要で述べている通り、(1)~(3)の目標は概ね達成することができた。(1)の転写因子活性化に向かう信号伝達がまだ不完全であることより、(1)に関しては、本年度でも継続して検討を行うものとする。
今後の研究推進方策は以下の通りである。(1)当同定転写因子に向かうそれぞれのSSSRs下流がん転移信号伝達経路を完成させる。(2)S100A8/A9 – SSSRsの連携をブロックする有効な方法を確立する。
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