研究課題
骨肉腫はこれまで研究対象として扱われる機会が少なく、極めて解析が遅れている間葉系細胞由来の悪性腫瘍である。本研究はその骨肉腫を研究対象とし、臨床応用に結びつく、骨肉腫発症の基盤となる分子メカニズムを解明することを目的とする。1.これまでに、12種類のヒト骨肉腫細胞株および約40検体のヒト骨肉腫臨床検体を用いた解析から、正常骨芽細胞および骨髄間葉系幹細胞と比較して、骨肉腫細胞において顕著にRUNX3の発現が亢進することを見出した。2.RUNX3の腫瘍化促進機能をマウス生体レベルでより明確に検証するため、p53のコンディショナル・ノックアウトマウスを用意した。骨肉腫発症には「がん抑制遺伝子」p53の不活性化が必須で、間葉系細胞特異的にp53を不活性化したp53コンディショナル・ノックアウトマウスは、ヒト骨肉腫のモデルマウスとされている。そこで、Runx3のコンディショナル・ノックアウトマウスとp53コンディショナル・ノックアウトマウスとを交配し、双方を同時に未分化間葉系細胞特異的に不活性化したところ、p53のみをノックアウトしたマウスに比べて顕著に骨肉腫の発症が抑制された。骨肉腫の発症に広く関与するとされる「がん抑制遺伝子」p53であるが、そのp53の欠失による骨肉腫の発症が、研究代表者の見出した「がん遺伝子」RUNX3の機能欠失により抑制された。そこでこの知見をもとに、骨肉腫発症において拮抗する「がん抑制遺伝子」p53と「がん遺伝子」RUNX3の機能相関とその作用機序を、種々の遺伝子改変マウスを駆使することによって明らかにしたいと考えた。
2: おおむね順調に進展している
これまでの解析から明らかになった分子メカニズムをマウス生体レベルで検証することを目的に、種々の遺伝子改変マウスを作製してきた。現在は予定していたラインのほぼすべてが作出され、その交配をすすめながら骨肉腫発症を観察できる状態になっているため。
26年度に作出された遺伝子改変マウスラインを既存のマウスラインと交配させることにより、数種類のマウスラインの骨肉腫発症を検討する。各ラインにおいて♂♀最低各15匹を用意し、1年から2年間飼育して、その間の骨肉腫発症頻度、発症時期、および寿命を観察し、p53コンディショナル・ノックアウトマウスの骨肉腫発症と比較検討する。
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Oncogene
巻: 33 ページ: 1862-1871
10.1038/onc.2013.130.
Cancer Science
巻: 105 ページ: 418-424
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http://www.de.nagasaki-u.ac.jp/dokuji/mbb/index.html